王と天皇 (ちくま学芸文庫 ア 2-2)
王と天皇 (ちくま学芸文庫 ア 2-2) / 感想・レビュー
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**日本宗教論**神話・天皇ネタの小説読解の為読了。天皇とは王の異伝なのだろうか?その問いを発すると同時に"王権"にも強く触れている。ジブリ作品『もののけ姫』や神道考古学の『八百万の神』。その意味がかなり深いところまで本書1冊で分かる稀な良書――八百万(やおろず)とは800万という数ではなく、数が多いことの別称です。太古は神社など存在しておりませんでした。人々の棲む世界に、ポツンと一画『神社』があるのではなく、人類未踏の大自然の中に、ポツンと『人類の世界』があった。 ⇒続き
2013/07/20
らぱん
昭和の終わりに書かれた本を平成の終わりに読む。神話、歴史書、文学さまざまなテキストから論述される。敗戦後すぐのGHQ撮影の写真は、長身でリラックスした姿のマッカーサーと小柄で直立不動の昭和天皇。アメリカは、崇め奉っていた神の姿が矮小であることを強調し畏怖や敬慕の念を削ごうとしたが、日本人には童形(≒ちいさきもの)に清らかさを見出し愛でる心情があり、天皇に落胆せず、戦争責任を問う方向にもならず目論見は外れた。わたしたちの王は絶対権力者ではなく、世界の浄化と再生のためには贖罪者にもなるものの系譜にあるらしい。
2019/04/11
猫丸
久しぶりに脳が沸騰する。今年度最多の付箋が付いた。その数ひいふうみい…20箇所。いよいよ今週は大嘗祭である。僕の見る二度目の大嘗祭だ。今回は前天皇の遺骸は存在しない。平成天皇存命下での代替わりの儀式であるから変則といえる。折口の提唱する天皇霊の注入儀式としての大嘗祭は後続の國學院系歴史家によって否定されたが、荒ぶる魂を継承する呪術的装置が伝承されていると思った方がエキサイティングではないか。折口説を反駁する論にいくぶん言い訳めいた音調を感じるのも一因である。やはり真床襲衾にまつわる秘儀が行われると見たい。
2019/11/11
うえ
「中世のイギリスやフランスには王の奇蹟と神秘の力にたいする信仰が…存在した…19世紀になっても、フランスには王が治癒力をもつと確信している信者は多く、フランス革命で中断された奇蹟の復活を求めた」「フレイザーが印象深く描きだした初源の呪術師たちの姿は、ツキヨミ(月読み)・ヒジリ(日知り)・モノシリ(霊知り)などとよばれた、日本古代の原始宗教者たちを彷彿とさせずにはおかない」「大林太良は以下のように結論する…日本の古代には新嘗を含む十月、十一月という時節が<王>の弑逆に適した時期である、とする観念が存在した」
2016/02/13
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