機械じかけの夢 (ちくま学芸文庫 カ 4-2)
機械じかけの夢 (ちくま学芸文庫 カ 4-2) / 感想・レビュー
karatte
再読。ここで取り上げられているSF作品の中で読了済みなのは『幼年期の終わり』たった一冊という完全な門外漢なので、記述に関してはどうしたって受け身にならざるをえない。まあ笠井御大の一ファンとしては、この観念史観とでも呼ぶべき独自の観点は読み物としても楽しめるし、幻想文学の変遷を辿りつつそれの解体をも目指すという意欲的な序説からは先日読んだ『群衆の悪魔』の萌芽も伺われ興味深い。ル=グィン論での幾分暴走気味な重ね合わせも、初の評論集という点を鑑みれば微笑ましくさえある。
2018/01/01
ハチアカデミー
単純にSF史における名作・傑作を知ることもできるのだが、SFを素材にした総合的な学問知としての「社会学」論としても読める。SFは「いま・ここ」を離れ、人間あらざる者が登場し、人類に変化を迫る、または現状に疑問符を投げかける。SFは近代文学的のイデオロギー、理性の特権化と限界の提示によって隠された神話的世界を汲むものであり、ロマン主義やゴシック小説の系統の中にある。そのSFが誕生から80年代のサイバーパンクまで、どのような変遷をしてきたのか、そして著者自らがどのように読んできたのかが語られる良書である。
2014/02/17
うえ
小松左京の『果しなき流れの果に』などSF作家論・作品論を集めたもの。思想的背景にかなり詳しく語られている。「『果しなき流れの果に』で語られている小松左京の思想には、生物学者でカトリック思想家のテイヤール・ド・シャルダンの「危険さ」にどこかつうじるところがある。もちろん、昔『危険な思想家』の著者である山田宗睦を批判した時の大江健三郎ではないけれども、思想家としては安全かつ衛生無害であるよりも「危険」な方がより上等であることはいうまでもないことだが。」
2021/12/23
Engine of whale
笠井潔のSF評論。ドイツ・ロマン派の幻想文学からギブスンと、かなり射程は長い。傑出したSF作品に近現代社会の病理への批判的精神を見出だし、鮮やかに論述してみせる手並みも見事。特にギブスン論は白眉で、これだけ端的に電脳三部作の魅力を伝えられている文章はなかなかないと思う。 ただ、本人も述懐しているとおり、各作品の表現・語りの方面へのアプローチは弱い。そのため、やや飛躍の見られる箇所や、大雑把な括りで論証しようとしている箇所もあるので、文学評論としての評価は、「面白いけど暴走気味」といった感じかな。
2019/12/21
noobie
SFに関する造詣に浅い僕には個人史としてよりはむしろ通史として読めた分が大きかった。それなりに言及されているテクストに目を通している必要はあると思う。
2012/04/30
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