日本文学史序説 (下) (ちくま学芸文庫 カ 13-2)
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日本文学史序説 (下) (ちくま学芸文庫 カ 13-2) / 感想・レビュー
松本直哉
下巻は18世紀から20世紀。普通の文学史では取り上げない大塩平八郎や中江兆民などの思想家にもページが割かれて、思想史としても読める。明治維新で区切る従来の文学史と違って19世紀全体を大きな転換期と捉えることで全く新鮮な視野が開ける。泉鏡花や永井荷風と江戸文学とのつながりはいうまでもなく、たとえば江戸後期のおかげまいりやええじゃないかのような自発的無政府的な大衆の運動と、維新後の自由民権運動や米騒動とのつながりも見えてくる。このころまでの日本人は反体制的なエネルギーに満ちていたのだよな、と思う。
2019/12/14
Major
概論的な文学史ではない。だから『文学史序説』なのである。つまり「(加藤が意図する)新たな概論的文学史のための序説(試論)なのである。「序説」ですでにこの堅牢で緻密な論述の建築物を作り上げている。その土台となる膨大な書物、文献資料等の読込みに費やした著者の労力は、誠に想像を絶する。著者の日本文学史(ほとんど日本精神史)観に立ち、この1300年以上もの間に滔々と流れ続けるディスクールの大河の流れを鳥瞰すれば、それまで常識的に(慣例的に)取り上げられてきた作家を俎上に載せないこともありうる。4つのコメントへ
2017/08/28
マッキー
やっと読み終わった。石川淳、鶴見俊輔、安部公房、安岡章太郎、そして谷崎潤一郎・・・、近代、近現代は自分の専攻なので読んでてすごく刺激的だった。自然主義文学についての洞察もなかなかうなずけるものがある。個人の思想や文学的特徴、時代背景をも含めたマクロな文学史、読んで損はないと思う。
2016/07/31
羊山羊
文学史、という形を取って、日本の文化史や精神史を総ざらえする1冊だ。谷崎潤一郎の当たりからは俄然興味を持って読めた。難しくて全ては理解できないが、学びの多い1冊。
2022/07/18
K.iz
無人島に本を持って行くとしたら?と問われればこの上下巻を選ぶ。で、食料も探さずむさぼり読んで、三日もたたずに干からびるだろう。再読して気づいた点①やはり論理構成が巧み②だけでなく往々にして能弁となる文章は詩人の感性がある。この感性は作品の選定や評価にまで及び、実は客観性を損なっている。が、だからこそ無乾燥な教科書と異なり魅力がでる③行間から感じるのは、必要な本は全て自分で読み、考えた事からくる自信。多読で有名な人は多いが、論理的な手法を知る人は少なく、かつ詩人となるとさらに少ない。だからこの本は貴重。
2015/03/20
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