物語のウロボロス (ちくま学芸文庫 カ 4-3)
物語のウロボロス (ちくま学芸文庫 カ 4-3) / 感想・レビュー
てら
過去に読んだことはあるが、例によって内容はすっかり忘れていた本。『例外社会』の質・量に圧倒されて、逃避して箸休めのつもりでこっちを読んでしまった。文芸評論というのはある意味不毛な部分があると思うが、評者が良ければちゃんと意味があるし面白い、とあらためて感じる。笠井潔のすごさはいろいろあるが、この内容をバブル真っ盛りの80年代後半に書き、25年近くたった今も論の背骨がほとんどブレていないことは特筆していいだろう。大江と村上(春)という「モナカの皮」で、探偵小説家たちという「アンコ」をくるんだ一冊。
2012/11/10
Yuji
推理小説をここまで真面目に文芸評論の対象として捉える人はいません。しかし、ここでの大江健三郎と村上春樹氏の評論は、率直で、当たってると感じました。
2013/09/23
急性人間病
自己増殖する物語を観念として制度/権力化する二元論(二項対立)と、それを外側から括弧付の「二元論」としてしか批判しえない言論を回避し、物語の内側から爆弾を起動させるには?という問題提起が、いくら解体しても生えてくる観念と一緒に生きるしかない立場にとってこれ以上なく刺激的な試みとして、“黒い水脈”に、伝奇小説に、大江・三島・春樹らの現代文学史に膾炙してゆき、『すべての二元論は隠蔽された三元論である』という命題が示す“3つ目”を求めての聖杯探索へこちらを誘う。宝探ししたいぜ、宝探ししたいぜ、球体の外側で。
2022/11/10
Jimmy
通勤の電車の中で毎日ちょっとずつ読み進めたら意外と腹に落ちる話が多くてここまで積ん読にしていたのが可哀想になったぐらい面白かったです。特に小栗虫太郎論は不思議に小難しくもなくスッと入ってきましたし、知らない作家の国枝史郎論は本題に入る前の怨霊の考察が本当にめっけもんの得しました。
2017/11/07
nukuteomika
近代を相対化する文学としての伝奇小説論。ほとんど論じられることのない作家ばかりで興味深い。個人的には笠井のベスト作品になりそう
2009/12/17
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