東京の下層社会 (ちくま学芸文庫 キ 9-1)
東京の下層社会 (ちくま学芸文庫 キ 9-1) / 感想・レビュー
橘
職場の先輩からお借りしました。資料として読んでいたのですが、ついこの間まで日本はこんな感じだったのだなぁ…と驚くことしきりです。今も、労働力は使い捨てみたいなところもありますが、この頃はもっとひどく、寧ろ人間扱いされてないです。前半はまだどうにか、でしたが、もらい子殺しくらいから辛く、娼婦・私娼・女工はしんどかったです。夢に見ました。働いても働いても楽にならない。搾取される生。福祉についてはまだまだ充分でない気がしました。表から見えなければいいのか…ううむ。
2019/05/19
やまやま
いわゆる「貧困ビジネス」は現在においても連綿と続いている「より弱いものを」搾取する手法であるが、それは過去からの繰り返しである。本書からは明治期から昭和初期における都市底辺生活者の実態を詳細に読み取ることができるが、その原因を考えると実に暗澹たる気持ちになるのは他の皆さんの評と同様である。このような貧困に直接見分の機会が乏しかった自分としては、想像力を働かせて、といっても限界があることをわきまえて、貧困の問題を考える必要を感じている。本音で言えば、現在の貧困をどう捉えるか、難しい問題でありましょう。
2021/05/04
ATS
福祉機能がないと人間的な生活がいかに破綻するのかよくわかった。日本政府が表面的な対策しかしなかったのは昔から相変わらずなのだなぁと(最近でも性風俗業の人にコロナ給付金は払わないという差別が行われた)。山本周五郎の『季節のない街』はスラムのような街での実体験をもとに書かれたのであろうがそれを想起させた。スラムについてはこの動画を見るとイメージしやすい(→ https://youtu.be/cHry5vBkHs4 )。吉原遊廓から脱出した森光子の話や女工たちの生活など本当に悲惨すぎて心が痛んだ。
2022/08/01
bluemint
よくぞ書いてくれた。忘れられた夥しい資料を整理して、我々にも読める形にしてくれたことに感謝する。この悲惨という言葉だけでは言い尽くせない歴史に、どう気持ちを整理をすれば良いのかわからない。明治の初期でも、悲惨な現実を記録して広く伝えようとした人々がいて、救おうとした人々がいたことに少し救われる。決して少数ではないこれらの人々に対し、普通の人はただの風景にしか見ていない。無一文で病気でも保護してくれ、人並みな生活を保証してくれる現代は何て有難いのだろう。
2020/09/08
ブロッコ・リー
読んだ。下谷万年町(現台東区上野4丁目北上野1丁目)、芝新網(現港区浜松町2丁目)、四谷鮫ヶ橋(現新宿若葉町)に明治期から形成されていた細民街の生活風景やその周辺に作られていった花街の様子を描く。ノスタルジックな懐古趣味ではなく、日々の食糧は近場の軍や飲食店から出る残飯を買い求め、蚤虱南京虫などの吸血昆虫に苛まれ、棟割長屋の家主から日掛け家賃の取り立てに追い立てられ、行政の手は差し伸べられずと惨憺たる状況が描かれている。当時の新聞各社は、競って記者を変装させてこの中で生活をさせながらルポをする。
2022/08/10
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