江藤淳コレクション 1 史論 (ちくま学芸文庫 エ 7-1)
江藤淳コレクション 1 史論 (ちくま学芸文庫 エ 7-1) / 感想・レビュー
再読。『閉ざされた言語空間』を代表される「検閲」以前/以後を精神分析的な「読み」の過程によって戦後的なシステムを炙り出していくのが面白い。ただ、これに影響を受けた加藤典洋にしてもそうだが、やっぱり徹頭徹尾疎外論の枠組みなのが駄目。結局、疎外論の切り口からでは戦前へのノスタルジーしか行き着かない。江藤は「ごっこ」遊びを批判するが、「ごっこ」の終わりは、やはりまた新たな「ごっこ」の始まりに過ぎない。始末が悪いのは、自分は「ごっこ」ではないと嘯くやつだけだろう。そして、それは日本に限った話ではない。
2023/11/28
ミスター
江藤淳の『ごっこの世界が終わるとき』はよく言及されているが、改めて読んでみると一般に言われているような読解とは違っているように思えた。江藤はごっこが常に終わるものだと言っている。鬼ごっこをしていたとしても、それはいつか終わり子供達は家に帰る。一人の子供が怪我をすれば「ごっこ」の結界は崩壊し、生々しい擦り傷とともに白けた現実感が登場する。だから江藤がいう「ごっこ」とは終わらせるものではなく「終わる」ものなのだ。しかし人は多くの場合「ごっこの終わり」を見ないでいる。それこそ江藤が批判したものではないか。
2019/12/22
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