奇妙な廃墟 ――フランスにおける反近代主義の系譜とコラボラトゥール (ちくま学芸文庫 フ 15-2)
奇妙な廃墟 ――フランスにおける反近代主義の系譜とコラボラトゥール (ちくま学芸文庫 フ 15-2) / 感想・レビュー
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フランスにおけるファシズムの系譜に連なる文学者を取り上げ執筆に7年を費やしたという大作。取り上げたのはゴビノー、バレス、モーラス、ドリュ・ラ・ロシェル、ブラジヤック、ルバテ、ニミエ。序文はその淵源と言われるハイデッガー。論旨にわかりづらいというか強引な個所(モーラスの章)もあるが、何といっても大変に面白い。例えばブラジヤックにとってのアンガジュマンは「青春」の実現手段だったといった驚愕する見解を述べているし、古典的教養を体現しながら同時にファシズムに心酔していた人物像を浮き彫りにしている。
2013/12/07
小谷野敦
もう20年以上前、福田和也が保守の論客として華々しく活躍していたころに、誰かから、「奇妙な廃墟」だけはいい本だと言われた。私は、いい本なんだろうなと思いつつ、本を買いまでしつつ、今日まで読まずに来たが、とうとう読んで、これを30歳そこそこで書くというのはすごいことだと思い、しかし22歳から29歳まで7年かかって書いたというのを読んで、まあ7年かければできるかなと思った。だがこれだけのものを書いても、ナチス協力作家が対象では、フランス文学者として大学でのキャリアは得られないのか、と思った。
2024/08/22
seer78
ナチス占領下のフランスのコラボ(対独協力)作家たちの肖像を描く。前段として、19世紀来の根強い反ユダヤ主義の伝統から論じられている。革命に始まり近代を主導者を自認するフランスで荒れ狂った反近代主義の系譜を辿ったこの仕事は、ハイデガー、ツェラン、パウンド、ブランショらへの言及と相俟って、フランス世俗主義の欺瞞が白日の下になりつつある今こそ読まれるべき。扱われている作家たちに統一した思想や明確な目標があったわけでもなく、個々の戦いの違いにこそ意義がある。フランス文学・思想という枠組みを越えた射程を持つ一書。
2016/01/14
毒モナカジャンボ
リュシアン・ルバテへの評の最後で鳥肌が立った。「ありていに言ってルバテの戦いはすでに終わってしまっており、かれの著書『ひとつの音楽史』は、独得の判断に驚かされる専門家をのぞけば、誰もが読者のよろこびを味わいうるような作品なのである。そしてそれはルバテにとって、やはりひとつの敗北なのだった。」
2022/03/14
みぎり
ナチスに協力した廉で葬り去られたフランス文学の学派を「反近代主義」としてとりあげた文学評論の本。7人の文学者を順にとりあげることを基本とするが、間には同時代の政治的状況の解説も差し挟まれ、歴史小説のようですらある。混乱を極める第三共和政のもと、今で言うところの「右翼」「左翼」が入り乱れ新たな時代の思想を模索する様が描かれ、非常に面白い。
2019/08/31
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