奇想の系譜 (ちくま学芸文庫)
奇想の系譜 (ちくま学芸文庫) / 感想・レビュー
こーた
かれこれ五十年ほどまえに書かれた本である。当時ほとんど知られていなかった若冲は、いまや空前のブームとなって、江戸期を代表する絵師にまでなった。奇想は、異端ではなく主流の前衛だったのだ。その絵の数々が、ちゃんと残っていたことが何よりも貴い。残っていたからこそ、傍流は主流にもなれた。王朝文学から受け継がれて桃山文化で花開いた遊び心と、古浄瑠璃の内包するグロテスクとが相まって浮世絵がうまれた。鋭い観察眼が描く動植物の描線は、博物誌のように精緻だ。奇矯(エキセントリック)かつ幻想的(ファンタスティック)。⇒
2018/06/29
徒花
まあまあよかった。江戸時代に活躍していた「ちょっとヘンな日本画」を描いていたアーティストたちを紹介する一冊。紹介されているのは岩佐又兵衛、狩野山雪、伊藤若冲、曾我蕭白、長沢芦雪、歌川国芳の6人。そもそも50年以上前に雑誌「美術手帖」に連載していたものをまとめたもので、文中ではこれらのアーティストたちが一般には知名度が低いとされているけれど、最後のあとがき部分などで近年になって一気にポピュラーになったことが述べられている。実際の絵画も多数画像が掲載されている。やっぱり曾我蕭白のトチ狂った絵は好き。
2023/02/06
夜長月🌙@新潮部
東京都美術館で開催中の「奇想の系譜展」に行くための予習として読了。展示のある8名の画家のうち6名が紹介されています。今や大人気の伊藤若冲が50年前は忘れられている奇矯の画家扱いだったのですね。「主流」の中の「主流」からは外れているからこそ自由な表現ができたのでしょう。
2019/02/11
i-miya
2013.12.14(12/14)(つづき)辻惟雄(のぶお)著。 12/12 (p056) ◎『豊国祭図屏風』(徳川黎明会)。 人物表現のクセに強い特徴=又兵衛との関連。 =又兵衛風。 特に「上瑠璃」の人物の顔つきは、「黎明会本」とそっくり。 本人、又は同一工房の作に違いない。
2013/12/14
井月 奎(いづき けい)
組み立てが素晴らしいです。最初に岩佐又兵衛をだして「奇想」であるということを読者に知らしめて後、狩野山雪から伊藤若冲とつなげます。伊藤若冲を三番目に持ってきたというのがすごいと思うのです。若冲はその画業や、奇想の特に際立った水墨画を見れば「奇想」であることを理解するのは容易ですが、極彩色の鶏や海の生き物、そして仏様の絵が「奇想」だと分かりやすいように、「又兵衛、山雪と来るのだから次も大した奇想だろう」と思うように組み立ててあります。近代の日本画の成り立ちを立体的に見させてくれます。さすがの名著、です。
2019/04/09
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