フラジャイル 弱さからの出発 (ちくま学芸文庫)
フラジャイル 弱さからの出発 (ちくま学芸文庫) / 感想・レビュー
傘緑
手に触るすら恐ろしい、薄翅蜉蝣のような儚さや脆さや危うさを孕んだ「壊れもの注意(Fragile)!」の千夜千冊の本。「この本は叙述のしかたもいささか変わっている。テレーズ・ラカンの人生と黄昏の科学とトルーマン・カポーティのホモセクシャリティとがつながり、中世の説経節とカオスの物理学とシンデレラの謎とが重なり、オスカー・ベッカーの美意識と長吏浅草弾左衛門の実態とミシェル・フーコーの歴史思想とが、いっしょくたに語られる」人間の庇護欲をかき立て、懐に入り込んでくる、これらの”弱がり”の本たちの”利己的な模倣子”
2017/06/19
踊る猫
メビウスの帯のような本だと思った。たしかに大筋で見れば「弱さ」を考察した大著だが、その内実を負えばそんな行儀の良い読者を平気で置いてけぼりにして、いまで言うところの「多様性」を発揮……というか盛り沢山。古今東西の文献からサンプリングされた蘊蓄が並び、かと思いきや著者の私的な体験がエッセイ風につづられ、いったいなにを読んでいるのかだんだんわからなくなる。言うまでもなく知識の「遊」びの強度としてこれに勝る本はそうないだろう。だが同時にこの「迷」(マヨイガ?)の愉楽の強度・凄みに読み終えたあとも呆然としてしまう
2024/06/16
ゆう。
弱さの深さについて論じられている。弱いからこそ、人間という存在は柔らかく、深く生きていくことができるのだろう。強さを誇るものよりも、弱さのなかで懸命に生きている方が人間味がある。とても内容の濃い本だった。
2020/07/22
スミス市松
松岡正剛のラディカル・ウィルとともに、甚だ複雑な古今東西の弱さを駆け抜けていく。それは断片、ヴァルネラビリティ、あわいの空間、欠けた者たち、境界を跨ぐ者たち……。正直読んでいてわからない部分もあるが、それが「弱さ」の記述であり限り、ある種のセダクションとなって私をとらえてはなさない。「弱さ」とは私自身の問題だからだ。著者とのあいだに「弱さ」に関する共有感覚が生まれ、ときほぐされるような快楽を感じた。フラジャイル。弱さゆえに美しく、過敏で、鋭い何か。すぼめた手中でほたほたとはためく、うすばかげろうの危機感。
2011/03/05
Bartleby
この本は「弱さ」をめぐるいくつもの問いが筆者のすさまじい知識量とともに披瀝されていて、読むたびに異なるフラジャイルなことばの断片が刺さってくる。どの言葉が刺さってきたかで自分が今どんな弱さに感応している・したがっているか分かる。この本で挙げられる問いを自分の中でどれだけ深めていけるかが自分の中に長くあるテーマです。
2011/07/25
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