現代小説作法 (ちくま学芸文庫 オ 1-2)
現代小説作法 (ちくま学芸文庫 オ 1-2) / 感想・レビュー
パブロ
作家が書いた文章読本をいろいろ読んだ。三島由紀夫、丸谷才一、村田喜代子などなど。文をナリワイとする作家だもん、その人の腕と個性が発揮されていて、みんな面白い。じゃあ、明晰でスキがない文章を書く大岡昇平はどんな指南をするのか、興味津々。ってなわけで、やっぱり大岡昇平はカッチリキッチリ唸るくらい論理的ですよ。ですます調でやさしげに書かれているけれど、書き出しからプロット、描写など小説のすべてのことが網羅されていて、ずっしりと重いこと重いこと。文章読本の私のベストは中村真一郎だったけど、こりゃ〜1,2を争うな。
2016/11/30
直角
書名が「現代小説作法」なのに第一章の題が「小説に作法があるかという問題」で、面食らう。作法はないわけではないがそんなものを過信してはいけないということらしい。小説の書き方を所与のものとして示すのではなく、個別の小説作品がいかにして書かれたかを論じる中でその輪郭を明らかにしていく。小説の比較対象・競合ジャンルとして映画が大きく取り上げられているあたりは時代を感じた。
2018/04/28
なつき
『現代小説作法』読了。大岡昇平による、小説の方法論の本。イギリス文学史やフランス文学史をはじめ、さまざまな文学からその方法論の根拠をもってきている。もちろんそれらの文学を知っているとより深く身体の中心に落ちていくものだとは思うが、知らなくとも読める。しかし当たり前のことが難しい。
2017/04/21
MIYA
しかし小説家という職業は、人間の幸福の立地からすれば、危険をはらんでいます。人生をすべて小説的にしかながめられない人は不幸なのです。その不幸をのがれるには、いい小説を書くほかはありませんが、いい小説が必ず書けるとは限らないから困ります。その時真の不幸が訪れますから、注意を要します。
2024/07/13
ああああ
実生活においても、われわれが一番知っているのは自分です。他人は自分から推しはかって推測をするにすぎない。つまり自分は円球で、他人は扁平という原則は、生活の時間の中でも守られています。いくら他人の気持ちを察するといっても、一挙手一投足に気を回していたのでは、生活は成り立ちません。他人の中へ入るのは、恋をした時とか、小説を書く時ぐらいなものです。これが人生というもので、小説もほぼそれに照応しています。円球人物と扁平人物の織りなす模様が人生に似ていれば、われわれは本当の人生を見たと思います。P.117
2022/03/11
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