悪魔と裏切者: ルソーとヒューム (ちくま学芸文庫 ヤ 23-1)
悪魔と裏切者: ルソーとヒューム (ちくま学芸文庫 ヤ 23-1) / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
年金問題と社交での憂鬱に悩まされていたルソーは自分を擁護してくれたヒュームを批判した。一体、なぜ?ルソーも大概だが、ヒュームの哲学での有力者を弁護に立てて弁明する姿は権力にゴマをする金魚の糞のような嫌らしさがある。誰もがルソー(被害妄想)であり、ヒューム(偽善者)にもなる。そしてネットワークの発達で炎上という名の魔女狩りやバッシング、誹謗中傷、関係者でないのに個人情報の徹底的な洗い出しと開示などというネット上での「正義」という名の私刑が横溢する今だからこそ、この本はもう一度、日の出を見たのかもしれない。
2016/03/21
ラウリスタ~
フランスとスイスから迫害され行き場を失ったルソーを、イギリスのヒュームが親切心から迎え入れて、ロンドンで大々的に歓迎された。その後、ルソーはとんでもない被害妄想にかられ、ヒュームこそが迫害の黒幕だと信じ込み、二人の間で論争ならぬ「喧嘩」が始まった。この本は、彼らの間の手紙と、出版された文書をまとめたもの。戦後4年目でこんなふざけた本のためによく紙を使えたなと思いつつも、ちくま学芸のための新たな解題が意外にも非常に面白く、なるほどそういう深い深い「喧嘩」だったんだなと納得させられる。
2014/12/05
ころこ
ルソーが「エミール」を書いたことで迫害を受け、身を寄せたのがイギリスでした。ヒュームはルソーに便宜を図りましたが、行き違いがあり絶交します。ヒュームは常識人であり、手紙の対応をみる限り、非難される点はありません。他方、ルソーはプライドが高く、馬車の手配が気に食わないことを発端に、様々な非難をヒュームに浴びせます。決定的だったのは、文庫版で44ページにも及ぶ長文の手紙をヒュームに送り付けました。分量の割に思い込みが先行した手紙で、後に事実関係が違うとして、証言とされたダランベールからルソーは反論を受けていま
2017/11/18
いなお
本当に痴話喧嘩としか言い様がないが、哲学者の本性がさらけ出されており興味深い/1949年に刊行されたのは結構すごいんじゃないか
2016/05/12
左手爆弾
内容的には大したことがない。要するに、スキャンダルだ。それは筆者も序文ではっきりと断る。そして、解説にあるように、近代の2つの側面としてルソーとヒュームを理解するという読み方も、まぁ、そうなんじゃないか、と思う。が、なんといっても、本書の最大の魅力は書簡体の文章を実に美しく流麗な文章で訳しているところ。書簡の文章は非常に訳しにくいのは周知の通りだが、筆者たちの深い教養に支えられた文章は非常に味わい深い。逆に、地の文はそれに比べれば地味なように見える。
2015/05/15
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