柄谷行人講演集成1995-2015 思想的地震 (ちくま学芸文庫 カ 43-1)
柄谷行人講演集成1995-2015 思想的地震 (ちくま学芸文庫 カ 43-1) / 感想・レビュー
壱萬参仟縁
人は括弧に入れることと、括弧を外すことを学ぶ必要があるのです(24頁)。事例を挙げてその必要性を説かれている。現在、世界中のネーション=ステートは、資本主義的なグローバリゼーションによって「文化的に」浸食されていますが、それに対する反駁があっても、以前のような露骨なナショナリズムは出てこない。反駁の基盤は、イスラム教やキリスト教の原理主義で文学に敵対(42頁)。52-53頁の、世界資本主義の諸段階 という表は役立つ。項目は、世界資本主義が重商主義の18C後半を皮切りに、1810-70年の自由主義→
2017/06/08
かんがく
講演集というジャンルの本は初めて読むが、私が生まれてから大学生になるまでの時期に、著名な批評家・哲学者である著者がどのようなことを考え、発話してきたかという流れがわかった。ほかの著作も何冊か読んでいたこともあって理解はしやすかった。今年度は文芸批評系の本を読んでいきたいと思った。
2023/04/22
袖崎いたる
地震とあるからてっきりキェルケゴールかと思ったらカントでした。その意匠はデコンストラクションはデストラクションの前だと無力であることへの著者の気づきというか転換を指す。それは主に二つの震災により。個人的に気になった点を書き出せば――近代文学の終わりと宮台真司批判。サルトルの想像力はデリダの現前性批判である。個人と集団とを包摂する言語へのゲームインの観点から、父を忘れずに言の葉を弄するやまとごころへの気づきをもたらしたラカンの洞察。日本語には他者の権威に屈服したような抑圧がないために無意識なんてものは云々。
2017/03/12
なっぢ@断捨離実行中
自選講演集。この時期の著作は大体読んでるので基本的に『トラクリ』から『世界史の構造』にかけての思考課程を(やはり冷戦終焉前後に大きな断裂が走っている)再確認するだけだったが、『近代文学の終り』はなかなか衝撃的だった。文学はこれから先もう読まれないから若い人は映画や漫画をやればいい、とまで言うのだから参ってしまう。しかし柄谷を読むと同時にアニメやラノベもたしなむ(広い意味で)東浩紀の息子の一人である評者の在り様をふと振り返ってみれば自明としか言いようがなく、ブーメランが刺さってちょっと痛いですよ柄谷さん。
2017/01/11
またの名
あまりに意表を突く面白話をこしらえがちで、大阪の漫才は「大阪出身で東京大学に行ったコミュスト秋田実が弾圧を避けるため大阪に戻って創始した」という史観のファクトがどうなのか、よく判らない。文学の終わりを宣言した有名な講演から地震論やデモ論に性の問題、社会と歴史と幸徳秋水を並べ世界経済やアジアの構造まで、すべてを明晰な筋に整理。以前に贈与の交換様式Aが自由で平等な様式Dとして回帰すると述べてたと思ってたけど、ラカン的な現実界に当てはまる原遊動性を、象徴界に対応したAに先行すると言ってさらに遡行してるので焦る。
2022/08/24
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