ちくま日本文学全集 7 谷崎潤一郎
ちくま日本文学全集 7 谷崎潤一郎 / 感想・レビュー
かごめ
○刺青/女の裸身に蜘蛛の刺青を彫る男。蜘蛛に捕らえられたのは女ではない男であった。淫靡でありながら俯瞰的な表現は若い頃からの彼の筆致なのか。○秘密/隠棲しながらも変身して街を徘徊する男。再会した女の秘密を知り二人は別れる。秘密が支える歪んだ関係。○母を恋うる記/夜と心象を重ねる風景の巧みさ。○春琴抄/男の自虐的な愛の形は不快感さえ覚える。しかし、盲目の二人の飼っていた雲雀の声を聞きながら二人は自在に空を飛んだのだろう。鶯・雲雀・琴の音の表現は、二人の関係が濁であるにも関わらず、濁であるゆえに清く聞こえる。
2015/05/12
アサギモ
ちくまのこのシリーズはいいですね。古典名作の入門書にうってつけです。これまで谷崎文学は俺には早いなどと甚だ虚しい言い訳で後回しにしていた訳ですが、今は激しく後悔してます。読んで始めて分かる面白さは古典特有のものですが谷崎は群を抜いてそれが顕著でした。クッソ面白い。文章リズムが良いんですよね。サディスティックでマゾヒズムで、女装趣味が出てきた時は我が目を疑いました。根掘り深く読めば読むほど、そこに新たな発見ができそうですが、初読では感じたことは、特殊な変態性が物語として奥深いことが、僕にとって斬新だった。
2012/11/26
遠野
『刺青』のみ再読。美を手に入れることができれば滅んでもいいなんて、その思想自体が既に倒錯的な美しさを孕んでいるよなぁ。
2012/06/30
遠野
少し埃っぽい天蓋付きのベッドで、真紅の天鵞絨にくるまった少女が足を投げ出した気怠そうな格好で読んでいる、そんなイメージが浮かんできた。生気を吸い取られそうでいて、逆にお腹いっぱいになりそうでもある文体。「秘密」の、夜の闇に塗り込められた妖艶な謎と、「母を恋うる記」の冴え冴えとした白い月光が鮮烈に印象に残っている。「文章読本」には肯ける箇所が多々あり、是非とも全文を読んで参考にしたいと思った。
2011/10/02
冬桐
予想以上に面白かった‥‥。 近代文学というのは、どうしても言い回しだったり、内容が難しい&面白くないというイメージが先行しがちだったけど、谷崎作品はわかりやすく読みやすく面白かった。 有名な「刺青」から始まり「春琴抄」、そして谷崎自身の言葉による言葉や文章の解説の「文章読本抄」←これが一番お気に入りかも。 最初の作品は、白昼夢のような雰囲気と淫靡な雰囲気とが混じり合い、なんとも言えない気持ちになりながらも、最後の「吉野葛」「春琴抄」は自然の細かい描写、歴史を振り返る感じがとても綺麗で読みやすかった。楽しい
2021/09/17
感想・レビューをもっと見る