ちくま日本文学全集 21 菊池寛
ちくま日本文学全集 21 菊池寛 / 感想・レビュー
壱萬参仟縁
信濃から木曾へかかる鳥居峠に土着。夜は強盗を働いた(217頁)。市九郎は旅人のスキを突いて、宿の入り口で襲うのが常套手段(219頁)。市九郎は、男女二人を殺してしまうと、急に恐怖を感じて、一刻もいたたまらないように思った(222頁)。それが良心の呵責というものだろう。自分のことは棚に上げて、いったん人が悪事を為しているのを静観するとなると、浅ましさが市九郎の目に映らずにはいなかった(226頁)。獄中の殺人犯には読んでほしい作品の一つ。
2015/12/15
ばりぼー
直木賞特集の前に、手始めに賞を創設した菊池寛ご本人をと思ったら、これが凄い凄い!面白くて圧倒されました。駿河の府中を舞台に、主君を捨てて逃げた右衛門の「命ばかりは助けて下され」という命乞いを嘲笑う残酷美『三浦右衛門の最後』、国定忠次が国越えに連れて行く子分を決める投票で、九郎助は浅ましくも自分の名前を書いてしまい自己嫌悪の塊となる『入れ札』、主人を殺してその妾と逃げた市九郎が懺悔の思いから出家して、ひたすら隧道開鑿の大業にとりかかる『恩讐の彼方に』など、無駄な叙述を排した傑作ばかり。お見それ致しました。
2020/03/14
雲國斎
「恩讐の彼方に」と「忠直卿行状記」は大好きな作品。それぞれ10回くらいは読んだか。あと,中学校の国語の教科書にもある超短編の「形」も初めて読んだときはうなったなあ(この本には載ってなかったっけ?)…。
2003/05/09
N.TANAKA
かなり昔の作品ですが今読んでも面白いと思います。話のスジ的には今となっては良くある話になってしまったものも多いと思いますが、そんなことは関係なく純粋におもしろかったです。個人的には好色成道が好きです。
2017/03/14
クリイロエビチャ
「娯楽小説」という言葉が本当にしっくりくる作品群。無駄な物を全部そぎ落としたような文体と淡々とした進行、でもページを繰る手が止まらない面白さ。たくさん作品を残しているから、これからどんどん読んでいきたい。「藤十郎の恋」はタイトルから、手練手管に長けた役者が一世一代の恋をする~みたいな内容かと思って、歌舞伎に関する話なのに今まで読んでこなかった。でも、役者として一枚大きくなるために女性の気持ちどころか命さえ冷酷に扱う凄まじい性根の話だった。これ歌舞伎でやってほしいなぁ。今の役者さんでできる人いるのだろうか。
2013/10/20
感想・レビューをもっと見る