ちくま日本文学全集 45 林芙美子
ちくま日本文学全集 45 林芙美子 / 感想・レビュー
Kouro-hou
林芙美子というと放浪記、くらいしか知らなかった。元々は詩人を目指していたという辺りが初期作から伺える。何か貧乏で苦労して報われなくて、諦めているけど絶望はしていないという底辺生活表現が何だか文学的にキレイでしみじみする。「牡蠣」はリアリズム小説で、元は地味でも良い職人だったのが頭を打ったのをきっかけに薬漬け、可愛い彼女もすっかり擦れて逃げられ、職人自体が時代に取り残されて精神を病んで終わるジャンキー風味付きの鬱小説。牡蠣が全然出てこない??と思ったら主人公自体が牡蠣らしいとようやく気づく。
2020/08/24
cocobymidinette
本当に本当に私もこんな文章が書けたなら!すぱん、と音がするように潔く、一切の無駄がないのに、たまらなく蠱惑的で、香り立つように艶っぽい。(ほらこんな風に形容語を並べたてたくなってしまう時点で失格!)もし林芙美子がコピーを書いたら、絶対物が売れると思う。ただの言葉遊びみたいな昨今のイメージコピーのことではなく、ちゃんと物を売るためのコピーね。そこと文学的美しさは共存できるということを私はこの天才から学ぶのである。奥深き日本語の世界。
2015/05/15
Dの字
ほんとうは旺文社文庫の、320円ぽっきりのが大事にとってあるんです。『蒼馬を見たり』で感動
2010/04/23
九杯目
小説の中で描写される人々の生きている熱量が凄い… 『風琴と魚の町』の私の貧しさ、『清貧の書』の私の貧しさはそれぞれ違う種類のものなのだが、しかしどちらも台詞ひとつひとつにリアリティがあって何故こんなに人が生きている文章なのだろう…と感嘆してしまう。とにかく台詞が凄い。方言混じりの台詞も、丁寧語の台詞も、まるで喋っているのをそのまま聞いているように感じられる。地の文もしみじみよい…
2023/01/28
感想・レビューをもっと見る