ちくま哲学の森 3
ちくま哲学の森 3 / 感想・レビュー
ykshzk(虎猫図案房)
宮沢賢治の「毒もみのすきな署長さん」から親鸞の「歎異抄」まで、坂口安吾、マルクス、その他名だたる著者達による「悪」を考えさせる短編を集めたもの。本書の中の一編によれば、マザーグースのナンセンスを好むのは本当の悪人だそうで、大好きなマザーグースを検索していてこの本に辿り着いた自分としては複雑な気分だ。多分、本当の悪はそうそう目に見えるものではない。「○○さん、悪い人じゃないんだけどね」とよく人々は言う。そう評されるのは「悪い人」より始末が悪いような気がしている。悪い人じゃないけど、と言われない人になりたい。
2017/12/21
ひろちき
悪には興味がある。なぜかはわからないけれど。誰にでも潜んでいるように感じられるからかな。それを行動に移すことへの興味。この本の中では『尋問調書・補遺』が好きだ。訳が秀逸なのか好きな言葉がたくさん。「男が妻を望む理由に二種類ある」ってのと「あたしに何もしないとさえわかっていたら、いっしょにいってもいいわ」ってのがとくに好き。
2012/05/25
スズ
内容はタイトル通り。主に「してはいけないこと」(悪や罪)に対する憧憬、興味に関して書かれているものが収録されている。多種多様の悪。それ故に自分に合う合わないの差は随分と激しかった。私の頭では理解できないこともあったが…。皆言いたい放題で面白い。悪がどれだけ多様なのかが分かる。「盗む"もの"ではなく盗む"こと"に快楽がある」、「騙されたいという本能」、「友情とは、九分の侮蔑と…」と言う言葉に興味を持ったらぜひ読んで欲しい(文庫版もある)。
2013/10/16
Arowana
本シリーズの中では一番刺激的な世界だった。ちくま~の森は世界の図書館と云えそうな荘厳さがある。出版に携わった想像力豊かな方々に感謝したい。――学生「本来一つのものである全一的存在には善も悪もなかった。そこへ個人の主観が介入してその全体を分割し、善とか悪とかいう部分的原理が生まれた。いまだに全一的な者の中にいる神や神々には、ですから悪は無縁です。悪は、全一性を分割した人間に固有の原理なのですね。天国に悪がないのはそのためです。あそこは全一性の世界ですからね。分割を経験したことのない天国の住人は、ですからこの
2012/05/25
いぬかいつまき
「この世に悪があるとすれば、それは人の心だ」 悪とは人が人としてある以上、不可避のものかもしれない。何となれば自分や他人の行為を悪と看做し、自省し、或いは法律や罰則を用いて排除しようという行為は、人間にしか見られないのだから。 本書はそういった人間普遍の悪の概念について、洋の東西、時代、文章体裁を問わずに収載したアンソロジーである。 悪は人間によって作られた「法」によって明確化し、法が人間生活を規定する。ならば逆説的に、人間は悪を基底にして生きているとも言えるのではないだろうか?
2011/07/13
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