おたくの本懐: 「集める」ことの叡智と冒険 (ちくま文庫 な 29-2)
おたくの本懐: 「集める」ことの叡智と冒険 (ちくま文庫 な 29-2) / 感想・レビュー
マーブル
中心は「コレクター」である。紹介されている人びとはその時代では奇人と呼ばれる存在であり、後代にそのコレクションに価値が出て評価されてはいるが「おたく」と言い換えてさしつかえなさそうだ。美術品を集めその散逸を防いだ歴史上のコレクター。学術的コレクションを造り上げることで後世に新たな分野への道を拓いた者。「おたく」の心理的解剖を期待していた身からすると多少思わぬ方向へ話題は進んでいくが思いもかけぬ面白い情報ではある。彼らの目的、意図、精神や努力がコレクションとして形を成し、その結果があとあと影響を与えていく。
2024/08/03
いちはじめ
いわゆる「おたく」について語る本だと思って買うと失望するだろう。柳田国男、南方熊楠から、澁澤龍彦まで、博覧強記の学者や一つ分野を極めたコレクターをおたくの元祖と位置づけて紹介した本。内容は悪くないが、誤解を招きやすいタイトルは大きな減点
2005/01/22
AR読書記録
これはねぇ、プレ・プロローグが一番重要で読むべき内容だと思う。「おたく」(というのもいまはまただいぶ意味合いが変わってきてますが)への感情って一種マイナーなものへの偏見なんだって、びしっと指摘されているから。中身は徐々に内輪ネタな風味へグレードダウン、しているような気もしないでもないけど、それはそれで、「学会と文壇のはざまを滑走するコレクターシップの系譜」という図解はたいへんありがたい。ま、つまりたいへん好きですこの本。著者の写真はちょと萎えるけど、こういう精神の人についていきたい。
2012/11/23
きいち
自分の眼を鍛え、信じ、その眼に適ったモノを集めることに人生を賭けた人たちの列伝。皆さんカッコいいなあ。そして、この人たちがどうやら、長山自身のロールモデル、理想のキャリア。「あの先生変人だけど腕はいい」と言われることをめざすって、どう考えても主がコレクターで、従が歯科医、主客逆転というより、二つの専門を持つキャリア、というだけだ。そしておそらく、他人に向けた文章が書けるのも、きっと歯科医として患者に向き合う経験が活用されていることだろうし。
2012/05/13
ハンギ
長山靖生が29才の時に書いた本。若書きみたいだがそう思うと、すごくまっとうな本だ。おたくバッシングの時に書かれたせいもあり、コレクションをすることを正当化するように論を運んでいる。少し気になるのは、著者のジャンルは冒険小説、他にも美術品の蒐集などにも話は及ぶが、おたく的な事象とコレクションの事象が重なるのか、についてはそこまで論じていない。とはいえ、氏の語る収集品が持つ力については納得出来るところもある。僕もこんな生活してみたいなあ。少し羨ましい。
2011/03/23
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