トーベ・ヤンソン短篇集
トーベ・ヤンソン短篇集 / 感想・レビュー
アキ
映画「TOVE」では彫刻家の父との関係、画家としての苦悩、同性愛の目覚めが描かれ、最後に踊る姿が印象的だった。ムーミン以外に短編を主とした文筆の面でも有名で、この文庫では20篇のアンソロジーを5つのテーマで分けて紹介されている。「愛の物語」「自然のなかの芸術」など創作にまつわるもの、「往復書簡」での日本の少女が老いるまでの手紙の遣り取り、「ショッピング」のSFのような奇妙な体験、認知症の祖母との旅「時間の感覚」、死を描く「雨」など、いずれの作品でもそぎ落とされた文章と一風変わった奇妙な感覚が味わえる。
2021/10/14
アキ
ムーミンの作者トーベ・ヤンソンの短編からセレクトされた短編集。1914年生まれのスウェーデン系フィンランド人で無人島のようなところで素朴な生活の中仕事に打ち込んだらしい。「往復書簡」で日本の13歳の女の子からの手紙とその後老年になるまでのやり取りの中「作家の書いた本のなかでこそ作家と会うべきだ」というトーベの考えが素敵。翻訳文のせいか言葉の選択なのかすっと頭に入りにくい文章と終わり方。「見知らぬ街」で知り合った彼との会話が好き。「どういう本に興味がおありで」彼はふたたびにっこり笑っていった「どんな本でも」
2019/12/14
sofia
最初、改行がない文章に戸惑い、短編だからすぐ読めるのだが、前にページを戻ったりして、なかなか進まなかった。『カリン、わが友』『植物園』が好き。映画「TOVE」を見終わってから読んだので、どの話や風景にも、トーベ自身や家族が感じられた。
2021/11/05
minimu
小さな上質なトランクに珠玉の物語世界が詰まったような一冊でした。何が入っているか、開けてみるまでわからないトランク。その中にあるのは、あの時の忘れ物や、思い出の人との再会、見慣れないけれど何か懐かしさを感じる人との出会い、どこか別世界にいってしまった自分、知らず知らずのうちに生まれ変わり別の人生を送る自分。。たった一冊でたくさんの旅をさせてくれました。「森」「愛の物語」「リス」「絵」「ショッピング」「植物園」「リヴィエラへの旅」「汽車の旅」「時間の感覚」、さすが傑作選だけあり、好きな作品が選べません。
2016/04/19
テツ
トーベ・ヤンソンはムーミンだけではない。シニカルでニヒリズム的な視線で世界を描いているのに何故か読んでいると望郷の念に胸が締めつけられる。詩的な世界なので好みは分かれると思うけれどこれを受け入れられる人ならきっと、大人になって知らないうちに乾いてしまった感性の大地に懐かしさと寂しさが混在した仄かに温かい泉が湧き出てくる。そんな彼の短編集がこれでもかと詰め込まれた一冊。こうした世界を創り上げる源泉の一つになったフィンランドにいつか行ってみたいなと思う。
2017/01/04
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