敗戦後論 (ちくま文庫 か 45-1)
敗戦後論 (ちくま文庫 か 45-1) / 感想・レビュー
樋口佳之
表題作以外はまったく歯が立たなかった。要再読。
2019/05/25
またの名
火事の中「誰かが自分の上に覆いかぶさり、気がついたらその人はもう灰となり…自分はその灰に守られ、生きていた。その自分の真先にすべきことが自分を守って死んだその人を否定することであるとしたら、そういうねじれの生の中に、そもそも「正解」があるだろうか」というパラドクス。著者はこのねじれを直視し意識化した国家観及び憲法の選び直しを訴え、一方の人格が謝罪するや即座に他方の人格が否認する分裂した共同体の変化を狙う。だが両者とも死者を清い存在として神格化する誤りを指摘し、死者は汚れていると語る。両極の神聖視という壁。
2019/08/15
さえきかずひこ
読書会の課題図書なので、努力して読んだが、じゅうぶん理解したとは言えない読後感。とくに最後の章の、アーレントの語り口の問題について、いまいち得心できていない。しかし、ハイデガーに関心を持つ者としては、アーレントを見逃すわけにもいかないので、この点、改めて考え読み、読み考える必要を感じる。
2017/02/21
東京湾
戦後日本が背負わざるをえなくなった"ねじれ"。他ならぬ武力により決められた平和憲法、犠牲となった二百万の自国民と二千万の被侵略国民への弔いの矛盾、責任を負う主体を持てない国家。敗戦が齎した"ねじれ"は如何に克服し得るか、現代になお通ずるラディカルな論考。大義を失い自らを偽るしかなくなった敗戦国の動揺と分裂は、現代では回復するどころか忘却と共に改竄されつつあり、その点において読まれるべき本と断言できる。また「戦後後論」における太宰治とサリンジャーを引き合いに出した"誤りうるもの"の受容という論も面白かった。
2021/09/23
げんがっきそ
「おれは関係ない」は文学。一人一人の世界が広がっているというわけだ。これは僕が思い付いた勝手な喩えだが、宇宙では音は出ないと詰問されたジョージ・ルーカスは「俺の宇宙では出るんだよ」と答えたそうだ。全体の宇宙法則など俺には関係ないということだろう。 それで、このような感じのことを考えた先に戦後後論での答えはあったのだが、結論までの道筋が長すぎたのと、一筋縄でいかない難しさだったので、僕は答えを覚えていない。読んだ意味があるのかといわれると返す言葉もないのだけれど、高次元の話を追うのでやっとだった。再読案件。
2020/08/19
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