つむじ風食堂の夜 (ちくま文庫 よ 18-1)
つむじ風食堂の夜 (ちくま文庫 よ 18-1) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
黄昏から夜のしじまへと向かう時間。そして空間は、どことも知れぬ月舟町。どこか懐かしさの漂う街だ。豆腐屋さんがあったりもするけれど、それはどこかパリの下町―そう例えばモンパルナス界隈を想わせたりもする。あるいは、「あとがき」に出てくるリスボンの寂しさも似あうかも知れない。物語に大きな起伏のないところもいい。恋だって、そのほんの入り口まで。小説の中の色彩は終始モノトーンだ。珈琲の香りと、微かにクロケットの匂いはあるが、ここには音がない。静かな静かな界隈なのだ。たまさかに吹くつむじ風は、読者をも消滅へと誘う。
2015/06/30
へくとぱすかる
街の中の小食堂に集まる人々の、ちょっとした出来事、心のさざ波。クラフトエヴィング商会らしく、悲壮感のない、どこか人工的な雰囲気につつまれて、物語というより日常の風景を切り取った作品。深刻な、文学文学した(?)小説世界からは、遠く切り離された、星新一や別役実の作品に通じるような世界を感じる。長編だけど連作短編として気楽に読んで、しかし心に沁みた。
2019/05/20
ダリヤ
つむじかぜにのって、しょくどうにあつまるひとびとがかわす、かいわ。くろけっと、えすぷれっそ、おれんじ、てじな。こころがあたたまる、そんなおはなしたち。とうがらしのふるほんをかうときのおはなしがとてもすきで、なんどもよみかえしてしまいました。
2011/06/14
seacalf
『あなたはまだこの面白い小説を知らない』青山ブックセンター六本木店で、三年連続、すべての本の売り上げ第一位。この文庫本には、そんな帯がついていた。ミーハーな自分はテンションが上がるではないか。クラフト・エヴィング商會の人なのでデザイン性が強く、良くも悪くも軽やか。お気に入りになりそうな可愛いらしい人々が登場し、さらっと読めるので癒し効果は高め。個人的には「月舟町」より「月光町」の方が数倍魅力的かな。それにしても、この作品が三年連続売り上げ一位???うむむ。
2017/03/28
あや
吉田篤弘さんという作家さんと出会った運命の作品。何ともいえない世界観に引き込まれあっという間に読了。暖かみのある文章といい、文字の雰囲気に魅了されました。
2015/07/05
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