川端康成集: 片腕 (ちくま文庫 ふ 36-1 文豪怪談傑作選)
川端康成集: 片腕 (ちくま文庫 ふ 36-1 文豪怪談傑作選) / 感想・レビュー
優希
現実と幻想の境界線が曖昧になった耽美で幽玄の空気が広がっていました。妖美な心霊の世界は、常に怪しげな雰囲気がその裏に感じられます。心霊、幻視、妖気の漂う耽美とエロチックさ。冷たい美しさに惹かれました。
2016/03/05
keroppi
ちくま文庫「文豪怪談傑作選」を読みたくて、近くの図書館にあった「川端康成集」を読む。「片腕」は、以前何かで読んだことがあり、このエロチックさと怪異さが合わさっていながら美しい傑作だと思う。その他の作品も人の心と心霊の怪しさが描かれている。どの作品も最初の一行でその不思議な世界に導いてくれる。見事だと思う。と、読書メーターにレビューを書き込もうとしたら、何と10年ほど前にこの本が既読になっていた。感想は書いていない。本当に読んだのだろうか?そのことに一番ゾクッとなった。
2020/08/04
メタボン
☆☆☆☆ 作品としての完成度は今一つの短篇が多いが、川端文学をより深く堪能するために、その文章、映像の「手触り」を感じられたのは良かった。「片腕」は言わずと知れた名作。「ちよ」「処女作の祟り」は続けて読むと面白い。自分の記憶は曖昧なのに相手の思い出が詳細な「弓浦市」は別種の怖さ。鎌倉の石造美術を詳述する「岩に菊」。ひたすら美しく優しい怪談「薔薇の幽霊」。作品中一番怪談らしい「離合」。美しい初期短篇「篝火」の間にグロテスクな文学講演を挟む「時代の祝福」は未発表の佳作にて、これだけでもこの本の価値は高い。
2021/01/11
ベル@bell-zou
"女性のものと思われる腕が発見されました"などと聞くと、殺人か…と眉をひそめるのじゃなく、その体から切り離されたパーツのぽっかりとただ浮かぶ佇みを思いゾクリとする。あの薄っすらとした快感を「片腕」に思う。文豪・川端の怪談。現とあの世とをアンバランスに行き来する。夢や幻想と心霊は異なるようでつまりはひとつなのかもしれない。不完全で非合理な世界に惑わされた。「卵」夫を"異物"という妻がいい。「花ある写真」卵巣をとる娘、蝶々のような花。子宮と卵巣は蝶の姿を思わせる。>初出の新しい方が読み易い、とは限らなかった。
2019/09/15
こばまり
古色蒼然としたお化け屋敷に入ってみたら思いの外怖くて焦りました。怪談というよりも幻想文学。白石加代子さんで聴いてみたいです。
2014/07/16
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