三島由紀夫集: 雛の宿 (ちくま文庫 ふ 36-7 文豪怪談傑作選)
三島由紀夫集: 雛の宿 (ちくま文庫 ふ 36-7 文豪怪談傑作選) / 感想・レビュー
優希
面白かったです。短編と書評で構成されており、初めて三島を読む人にも抵抗なく読めるという印象です。その感性は強烈で、独特の精神世界で彩られていました。何処となく不気味でエロティシズムが漂う空気にゾクゾクさせられます。後半の文豪批評はおそらく抜粋であると思われるので、是非とも全文を読んでみたいなと。読みやすいけれど、最後の一文で飲み込まれるような雰囲気が好みでした。
2016/07/19
藤月はな(灯れ松明の火)
「花火」と「仲間」は三島由紀夫作品の妖美を感じさせます。色鮮やかな残酷さのある「雛の宿」、「孔雀」、「月澹荘綺譚」も印象的。特に「英霊の聲」は2.26事件の青年将校たちや神風特攻隊の天皇陛下への恋情とも取れるような敬愛と自分たちの思いは届かず、「天皇の人間宣言」によって神性が剥奪されたことによる呪詛に胸を抉られそうになります。これを当時の戦勝国側の人間が読んでいたらどんな反応になったのだろうか・・・・。三島由紀夫が「小説」で挙げている本に私が読んだ本や作家が多く、挙がっていて吃驚しました。
2013/04/03
優希
再読です。怪談から心霊小説、文学論と面白い要素が詰まっています。怪談傑作集と銘打ってはいますが、ホラー系ではなく、人間の中に潜む恐ろしさが描かれていると言って良いでしょう。独特の幻想的精神世界が素晴らしい作品だと思いました。面白かったです。
2023/12/09
ぼむ☆
怪談集ではあるが妖怪とか幽霊というのとは違っていて、生きていた、もしくは生きている人間の魂にまつわる作品が多い。どの作品も素晴らしくてまさしく傑作選である。タイトルにもなっている『雛の宿』、そして『孔雀』、『月澹荘綺譚』は特に好みである。しかしダントツは『英霊の聲』。圧巻!!天皇の『人間宣言』に対する二・二六事件の将校、神風特攻隊員の無念、三島の無念の声を食い入るように読んだ。これを読めたことが本当に大きな収穫だった。他の短編集に収録された『憂国』とこの作品だけは今後何度も繰り返し読むことになるだろう。
2022/04/19
Ayumi Katayama
前半は小説、後半は小説論。後半の小説論の方が俄然面白い。昔は三島の小説も好んで読んだのだけどな。私の好みが変わったのかはたまたこの編纂の小説が少々合わなかったのか。ただ、前半小説群の中で抜群によかったのは『英霊の聲』。降霊術のような展開だったからはじめは気にも止めなかったのが、降りてきたものはどうやらニ・二六事件の首謀者達であるらしい。俄に興味を覚える。『あの恋のはげしさと、あの恋の至純について語るだろう』 そう言って語りだした彼らの恋は、なんとも目の前で霊が語るかと思われるよう。
2021/05/16
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