辰巳屋疑獄 (ちくま文庫 ま 34-1)
辰巳屋疑獄 (ちくま文庫 ま 34-1) / 感想・レビュー
baba
大阪炭問屋の丁稚の目線で語られる跡目争い。若ぼん様と丁稚の関わりがいつしか跡目騒動から民事訴訟、更に大岡越前まで出てきて幕閣の武士を巻き込んみ、あれよと言う間の大事につながっていく様は芝居を見ている様な場面の移り変わりでした。
2016/04/10
鈴木拓
江戸時代、辰巳屋という炭問屋の跡継ぎ争いが、武士や公家まで巻き込む大事件に発展していった事件だが、現代になっても欲にまみれた人間模様は何ら変わらない。歴史に学ぶことがない者たちの姿を見るのか、あるいは人間の本質がそこにあるのか、いずれにしても悲しい有様である。最後に「欲のない人間ほど怖いもんはない」という台詞に心が痛むが、元助のように一見欲がないようでいて他人の悪事を担いでしまう人間も少なからずいるのだろう。愚かな人間の物語は人間が滅びない限りなくならないのかもしれない。
2023/12/29
シュラフ
人の世というのはつくづく儚いものだなと読後にため息が出てしまう。ふだん金持ちやらを羨んで、なんで自分は・・・と思ってしまうのだが、金が人を幸せにしてくれるわけでもない。この小説、舞台は江戸時代の大坂、蔵に金がうなるような豪商の辰巳屋が舞台。そのお家騒動をめぐって、事態は武士役人や公家の社会、さらには江戸幕府までをも巻き込んでしまう大疑獄事件まで発展してしまう。事件の張本人の吉兵衛も悪人というわけではないのだが、最悪の結末。そんな儚い世ではあるが、使用人の元助の主人への忠義だけに実があった気がする。
2015/02/19
タツ フカガワ
手代460人、家財200万両(2000億円相当)という大坂の大店「辰巳屋」の跡継ぎ争いは、やがて江戸の評定所に持ち込まれて大岡越前守が裁断することに。利を追い、利に溺れ、利に頼る姿は、最近新聞で見たいくつかの記事を想起させます。騒動の渦のすぐそばにいながら、頑なに自分の暮らしを守っていくお照の存在がこの物語の救いでした。
2018/04/28
びぃごろ
『悪玉伝』と同じ題材の本があると読メで知り読んでみた。こちらは主人に仕える元助の目線で、史実に近いように受け取れる硬めの内容。大岡越前の思惑や扱いは全く同じに感じた。当時の大騒動ぶりがよく伝わってくる。どれだけ金や地位があろうとも…ですよ。
2018/12/05
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