文章読本さん江 (ちくま文庫 さ 13-4)
文章読本さん江 (ちくま文庫 さ 13-4) / 感想・レビュー
Gotoran
鋭い切り口で痛快に評論することで定評のある文芸評論家の著者が、谷崎潤一郎に始まった幾多の著者の『文章読本』の流れをカテゴライズして、日本の作文教育、明治からの国語教育の変遷・歴史を辿って評論を加えていく。他著作でも見られる、いつものミナコ節が炸裂している。鋭い視点からの論評が心地よい。第一回小林秀雄賞受賞作と云う本作品を興味深く読むことが出来た。また巻末の引用文献・参考文献をもとに、幾つかの『文章読本』を読んでみたい。
2022/05/24
おさむ
明治時代以来、巷にあふれる文章読本を完膚なきまでにぶちのめす凄い本(笑)。内容や形式分析のほか、作文教育の変遷など徹底的に日本人の文章論を検証します。結論は「全ては自慢話」といったところでしょうか。ネット社会の最近はあまりこの手の読本、見かけなくなりましたね。小林秀雄賞受賞作。
2016/07/20
chiseiok
積読整理中に発掘、そのまま読みはじめる。…これが面白い!文章読本というジャンルがこんなにもディープだったとは。導入部はまるで昔のTV『カノッサの屈辱』(あれ知らないかなw)。やがて明治の頃の綴り方教育まで遡って現代に至るまでの、思いのほか緻密な分析解説。でも程よい毒とユーモアを含んだ褒め貶しで飽きさせない。上手いですなあ。筒井康隆御大が『創作の極意と掟 』の中で本作についてちらっと触れていて、こんな本があるから創作読本はやりづらい、斎藤美奈子に何言われるかわかんねーからなぁ…とぼやいていたのを思い出した。
2017/10/08
shoko
一言で言うと文章読本というジャンルをこきおろしている批評。構成として、①「文章読本」というジャンル解説、②日本の作文教育の歴史、③日本の学校の作文文化に対するアンチテーゼとしての文章読本、で成り立つ。著者のものすごい読書量に圧倒され、文章読本を歴史的経緯に紐づけて解剖する批評手腕があっぱれだった。/個人的収穫は今に至る作文教育の歴史に触れられたこと。日本の作文の系譜が「過度に形式的・規範的な書き言葉の文章」or「情緒的で随筆/私小説的な文章」の二つであることは、極めて日本らしいと思ってしまった。
2023/08/14
k sato
明治から2001年までに発刊された幾多の文章ハウツー本、いわゆる「文章読本」に対する辛辣な考察。文章の大衆化や文章体の変遷、文章読本の特色を自由闊達に語る。竹を割ったように鋭く垂直に切り込む批評スタイルは気持ちがいい。小難しい文章読本に振り回されている文章初心者の苦労を代弁している。例えば、文章読本の登竜門である谷崎純一郎の文章読本は、「人騒がせな本」とバッサリ。「いばるな文章読本、くたばれ文章読本」と一刀両断。読書感想文の発明、パソコンの出現に対しても、斬捨御免。文章って、時代を反映する。生き物みたい。
2022/11/02
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