湯ぶねに落ちた猫 (ちくま文庫 よ 22-1)
湯ぶねに落ちた猫 (ちくま文庫 よ 22-1) / 感想・レビュー
mii22.
【にゃんこまつり2021④】 詩人、小説家で愛猫家の理恵さんは吉行一家の末娘。繊細で純粋で感性の鋭い女性だ。そしてとても心根の優しいちょっと夢みる少女のようなところのある方だと私は思う。そんな理恵さんの代々飼ってきた猫たちに向き合う姿もその愛し方も猫好きの共感を得られるもので読んでいて顔がほころぶ。いずれは迎える愛するものとの死別さえも淡々とした中にも心の深いところで寄り添う彼女の言葉は胸にしみる。エッセイや小説によく登場する、淡いチャコールグレーの猫「雲」に対する愛情は特に深い。
2021/02/22
あつひめ
父も兄も作家、姉は女優、母は美容師として激動の時代を乗り越えてきた。その中で、ひっそりと過ごす理恵さんを思い浮かべる。猫の死や猫との出会い、暮らしぶりをあるがままに書いている。あまりにもリアルで・・・他所のネコなのに心臓を鷲掴みにされてしまうような苦しさがある。人とワイワイするよりも猫のように居たい場所でやりたいように過ごすのが好きらしい。猫タイプの理恵さん、私も猫タイプなので親近感が湧いてくる。
2011/01/23
tomi
対人恐怖症気味で人づき合いが苦手だった詩人にとって、寛げる相手は雲をはじめとする猫たちだったのでしょう。猫愛溢れるエッセイを中心に芥川賞受賞作「小さな貴婦人」と「黄色い猫」が収録されている。猫との距離感、歯の治療中に気絶する気弱さ、劣等意識―理恵さん初読みでしたが親近感が湧いてきて、とても共感できる内容でした。
2013/12/08
ミロミ
やっかみや嫉妬を受けやすい境遇だったのだろう。強い性格なら跳ね除けられるのだろうが、吉行理恵さんはそうではなかった。他人の悪意をいちいちまともに受けとめてしまう人。私も似た所があるので、他人とは思えない気持ちで読んだ。猫にまつわるエッセイや小説を中心にして編まれている。飼い猫が死ぬ話が度々あり、喪失感が身に迫って感じられ、そこは読むのがとても辛かった。しかし、虚飾とは無縁の訥々とした文章の味わいは得難いものだ。これから何度も、友達に会うようにこの本を開くことになるだろうと思う。
2017/04/24
井戸端アンジェリか
吉行理恵の周りには悪意が満ちあふれているように思える。一方で、神経が細かすぎて生きて行くのはしんどいだろうと、ガサツな私は夢想する。 猫に生まれたかったんだろうね。
2016/12/01
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