小川未明集: 幽霊船 (ちくま文庫 ふ 36-9 文豪怪談傑作選)
小川未明集: 幽霊船 (ちくま文庫 ふ 36-9 文豪怪談傑作選) / 感想・レビュー
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
全編に薄曇りのかなしみ。雪というものは、冬というものは、しろく美しいというだけでなく、こんな風に無造作に無作為にいのちを奪っていくものだったということを忘れていたような気がする。 前半が唐突で呆気ない死を受け入れる雪国のさみしさと美しさ、中盤がそれでもやさしい未明の童話、後半は西洋的な悪魔や魔女という概念を妖しく取りこんだ作品が多かった。 越後の国のうまれ小川未明の多作ぶりと作風の多様性に圧倒され、彼の根本に少し触れたような作品集でした。
2019/12/17
KAZOO
文豪怪談のシリーズを途中まで読んでいたのですが、中断してやっとまた読み始めました。「赤い蝋燭と人魚」で有名な作家ですが私は未読でした。この中にも収められていましたが、童話というよりも民話に近い気がしました。他の作品も同様で、子どもがいなくなったりする話を民俗的な色彩を織り込みながら読ませてくれます。怪談というよりもちょっと恐怖感で色をつけた民話でした。
2015/03/08
藤月はな(灯れ松明の火)
死は怖くも懐かしい回帰を引き起こすという「過ぎた春の記憶」。「凍える女」は小泉八雲へのリスペクト。「黄色い晩」や「暗い空」の不吉な予感や「森の暗き夜」の官能的から貧困からのネグレクトや幼児虐待の陰惨さへの移り変わりと怪異の出現による罪の認識という浄化へのプロセスの描き方は秀逸だと思います。「紅い蝋燭と人魚」や「蝋人形」、「黒い旗物語」のように不当に虐げられる存在がいるという哀しみが胸を突き刺します。
2013/03/17
小夜風
【図書館】怪奇幻想小説。絶対…童話では有り得ない(笑)。背筋がゾクゾクっ!鳥肌っ!百年ほど前に書かれた話だけど、どの話も現代に繋がっていて、今でも毎日のように何処かで起こっている…。子どもが犠牲になる話は読むのが辛かったです。特に、母親に虐げられて命を落とす話は、目を背けたくなりました。全部暗い。全部怖い。全部悲しい。永遠に目覚められない悪夢に捕らわれたような…ちょっと救いのない一冊。
2014/08/27
そうたそ
★★★☆☆ 小川未明というと当然、童話のイメージが強いのだが、本書ではそのイメージにない幻想的かつ幽玄な妖異の世界が描かれている。童話というイメージからは遠く離れているような思うのだが、本書にも収録されている名作童話「赤い蝋燭と人魚」をこの並びで読むと、小川未明の世界観の根底にあるものは童話であろうがなかろうが通ずるものがあるような気がしてくる。全集にも収録されていない作品を多数収録、とのことで非常に貴重なアンソロジーかと。寒風が吹き波の打ち寄せる沈鬱とした風景が著者の故郷・新潟を想起させる。
2020/03/16
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