高原好日: 20世紀の思い出から (ちくま文庫 か 51-1)
高原好日: 20世紀の思い出から (ちくま文庫 か 51-1) / 感想・レビュー
新地学@児童書病発動中
評論家・作家の加藤周一氏の交友録。加藤氏が夏を過ごした信州で出会った人たちの肖像が描かれている。登場する人物は作家の堀辰雄から財界人の鈴木治雄までと幅広い。新聞に掲載されたために親しみやすい文体が使われており、島崎藤村の霊が登場するなどユーモラスな面もあって、楽しかった。ここに登場する人物たちは時流に迎合することなく、凛として自分の生き方を貫いた人たちばかりで、著者の加藤氏もまさにそんな知識人だった。難しい話ばかりが出てくるのではなく、生を楽しむという姿勢や、加藤さんの人間としての温かさも伝わってきた。
2015/04/06
月
信濃追分村で過ごした夏は、異国で過ごすことが多い加藤にとっても特別の想いのある地である。ある意味加藤周一にとって心のふるさととも言える。故郷とは感覚的=知的な参照基準としての空間である。加藤にとっての浅間高原は、生涯を通じてそこへ立ち帰ることやめなかった地点であり、そこに心を残すことなしには、立ち去ることのなかった故郷でもある。そして、この時代の一文学者(堀辰雄、立原道造、福永武彦・・)たちにとって、旧軽井沢一体は同じ想いの人々の集まりの地でもある。
2015/06/30
ご〜ちゃん
短い文章でありながら、その人の紹介だけにとどまらず自分の意見をはっきりと落とし込んでいる。避暑ということ。都市まで時間がかかり、連絡がとりにくいということ。なんでも便利であればよい、ということではないと思う。
2016/04/23
shiaruvy
コメント予定
ご〜ちゃん
時々出てくる、既に亡くなっている人との対話が面白い。 佐久間象山との会話中に書かれている文章に、読み返してみて初めて気がつき、理想を持つことの大切さに気付かされた。 「しかし私は、理想がどれほど現実から離れているとしても、どういう理想を持つかは現実の一部である、と考える」
2023/08/14
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