君は永遠にそいつらより若い (ちくま文庫)
君は永遠にそいつらより若い (ちくま文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
津村紀久子のデビュー作にして、第21回太宰治賞受賞作。デビュー作とは思えない充実ぶり。主人公であり語り手の「わたし」は、身長が175cmの「童貞女」(変なのだが、作家がそう書いているので)。おそらくは作家自身がモデルだろう。ただし、小説そのものは純然たる創作だ。青春小説といえばいえるが、つまづきやためらいに満ちていて「わたし」はわたし自身を持て余しているかのようだ。また、うまく発露はできないものの、「わたし」の中にある根源的な正義感は純粋で、しかも存外に強い。その後への可能性も十全に秘めた若々しい小説だ。
2014/01/25
修一朗
津村記久子コンプリート計画もちびちびと進めます。ずっと積読していたデビュー作。’君は永遠にそいつらより若い’というタイトルがどこに着地するのか最後になってやっとわかった。旧タイトルは’マン・イーター’,人が理不尽に消費されてしまうことに対するメッセージだ。会社で摩耗する人を描いた「ポトスライムの舟」の前日譚。ホリガイも津村さんの分身。「わたしは自分に会いたいと思う人などこの世にいないだろうと思いながら生きてきた。今もそうだ」ホリガイの諦観に共感してしまう。これも傑作。
2023/08/10
buchipanda3
著者デビュー作。その目を引くタイトルの意味は何だろうと思いながら読み進めた。その言葉が出た時、そこに込められたものが痛切に伝わってきていたように思う。語り手は大学生、堀貝佐世(ホリガイ)。彼女はつい不器用な言動から変わった人に見られがち。でも相手の心を慮る繊細さを持ち、人の良さから損をして傷つくことも。その愚痴には津村さんらしいユーモアがまぶされ作品を重くなり過ぎないようにしていたが、でもホリガイの心を本当に掻き乱す人喰いの罪は重い。彼女の自然体で上手く立ち回らない姿は実は何ものにも代え難いのだと思った。
2022/05/17
エドワード
津村記久子さんの作品は、働く者の本音、苦々しい思い、やり場の無い不快感を、ユーモアあふれる日常と軽妙な会話で描く。これがデビュー作!後の作品へ継承されていくスピリットがしっかり根付いている。カタカナ名前の主人公の女性・ホリガイが、就活を終えた大学4年生、人間関係に思い切り悩んでいる屈折感が初々しい。まさに社会人の原点。大学とバイト先の日本酒工場で出会う、イノギ、カバキ、ヤスオカたちのそれぞれの悩みもリアルだ。ホリガイが何故児童福祉司という職業を選んだのか、終盤で出て来る題名の由来が深く、ジーンと感動する。
2019/02/27
ゴンゾウ@新潮部
津村さんのデビュー作。人間関係を築くことが苦手な女子大生ホリガイ。小学生の時に起きた男子生徒ふたりから袋叩きにされたことがトラウマになっている。どんなに努力しても変えられない諦め。そんなホリガイが卒業を間近にイノギさんの過去を知り、ホミネ君の死の訳を知り、アスミの事件を知り生への執着に目覚めていく。生きるのは辛くても生きていなければ何も起こらない。
2019/01/05
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