夏目漱石を読む (ちくま文庫 よ 2-5)
夏目漱石を読む (ちくま文庫 よ 2-5) / 感想・レビュー
おさむ
何故漱石はこんなに三角関係に執着するの?(それも2人の親しい男が1人の女を好きになる)多くの読者が感じる疑問への吉本センセイの解答はパラノイアと同性愛の資質。「ともにビョーキのトンデモ夫婦だった」と漱石夫妻をぶった斬る部分もあるものの、随所に漱石の才能へのリスペクトがあります。講演集なので平易な表現が多くて読みやすく、難解で知られる小林秀雄賞とは思えないほど(笑)。
2016/07/18
rena
夏目漱石は、こころしか読んだことがない。加えて吉本隆明は初読。講演会の話を本にしたものだから、イメージよりも分かり易いよい解説本だった。これを参考に読んでみたい漱石本は、「門」と「それから」。漱石は、大家だが、三角関係としかもパラノイア=妄想的な神経症の人。幼少期の複雑な家庭環境が最後まで作品に影を落としている。猫や坊ちゃんのような明るい?イメージとは違う漱石の内面性が平易な言葉でわかりやすく書かれているものの、漱石の本、作家の精神の旅に付き合うのも骨が折れそう。日本では明治以後未だ漱石超えの作家いない?
2017/04/07
長谷川透
「三部作」「後期三部作」など、漱石を読み説くときに普通なされる分類の仕方ではなく、漱石が作品に込めた精神性により主要12作品を4種類に再分類する試みが面白い。「渦巻ける漱石」と題した最初の章では『吾輩は猫である』『夢十夜』『それから』と類似性が全く無さそうな3作品を連ね、目次を見ながら首を傾げてしまったが、吉本隆明の手にかかれば、見事なロジックでこれら3作品を一本の糸で以て結んでしまうものだから、膝を打つ他ない。そして最終的には4つに分類もまた一つの大きな環を形成するように結ばれているのだから驚きだ。
2013/03/27
ももたろう
この作家はおそらく漱石作品を読み解く上で感じた「疑問」や「違和感」を徹底的に考え続けたと思う。漱石作品の評論も凄いと思うけど、この作家の姿勢は大いに学ぶところがあった。また、特に印象的だったのは夢十夜の章。「この作品はわけのわからない作品と読めるものと、わけのわかる作品と読めるものと、民話とか神話などとどこか糸で繋がっているような作品とに分類できる」と言っているところあたりは、丁寧に読み解くとはこういうことかと思った。違和感や疑問を放置しないで、書き留めて考え続けたいと思いました。非常に興味深い一冊。
2016/04/03
fishdeleuze
本書は、四回にわたる講演をまとめたもの。読みやすい。一つの講演で三つの作品を纏め論じており、その分類の仕方は独特だ。例えば『我輩は猫である』『夢十夜』『それから』を一つにまとめて「渦巻ける漱石」という題目であるなど。本論における通奏低音は、漱石の資質およびパラノイア的性質である。資質と作品との関連、あるいは、そういう資質故に作品としてどう現れ、昇華されているかなどが論じられている。
2013/07/23
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