家族の痕跡 いちばん最後に残るもの (ちくま文庫 さ 29-2)
家族の痕跡 いちばん最後に残るもの (ちくま文庫 さ 29-2) / 感想・レビュー
寛生
【図書館】本書は、かなりラディカルで斬新な《家族》への《解釈》を提示している。「誰もがけっして逃れることの出来ない理不尽さこそが、『家族』」であると臆することなく斉藤はいう。「世間」と「個人」の間に媒介として機能している「家族」には、「世間というシステム」と「家族というシステム」が互いに補完し合う関係となっていると斉藤は指摘し、例に、犯罪者の場合、世間の目はその個人でなく、先ず個人の家族に向けられるという。又、斉藤は家族論を語る上で、《働くことー労働》という概念から目を離さない。だが終わり方が少し残念。
2014/06/26
KAKAPO
冒頭《「家族」この奇妙な共同体には、実に多くの矛盾と逆説が詰め込まれている。家族は、絶望であって希望である。》と始まって《「人間」と「家族」だけは、変われば変わるほど変わらない。~私たちはいかにして「家族」と共存しうるのか。~》と終わる本書を読み終えた後、読者は否が応でも自分の家族を見詰め、自分自身と家族のありかたについて考えざるを得なくなるだろう。私たち一人ひとりの幸不幸は、好むと好まざるにかかわらず、家族という「ほかのいかなる人間関係よりもマシな形態」の在り方に依存していることを自覚したのだから…
2017/11/18
ころこ
本書は家族の問題を論じているので、いっけん保守的に映りますが、それは実際の親子関係だとかに当てはめ過ぎているからでしょう。家族の問題は、なぜか自分の家族にアンカーを降ろし、そのクオリアと問題のある件の家族の関係のどこに欠損があるのかと、どうしても考えてしまいます。なぜ、我々は個人の核の部分で、家族観を持っているのか。例えば、をなぜ母性父性という家族の隠喩でしか国家論を語れないのか。よく親子関係を放棄して、子供の共同で育成することが理想の国家像として論じられます。しかし、いつまで経ってもその様な観念で成立し
2019/05/25
マーブル
便利であって不便。親密にして疎遠。多様にして単純。単純にして複雑。深淵に通ずる浅瀬。個別にして不変。はかなくも不滅。神聖かつ下品。病の元凶にして癒しの器。人は家族のもとで成長し、家族のもとで退行する。人は家族ゆえに孤独を免れ、家族のために孤独になる。生きる上では必須のものだが無くても平気で生きていける。最大の喜びと最低の憂鬱さの源。誰もが嫌悪しつつ、誰もが憧れる。倫理を育むと同時に諸悪の根源である。つまり家族は、絶望であって希望である。人間がそうであるように。冒頭で筆者が描き出す家族像。
2023/10/04
ジョニジョニ
「就労は義務ではない」という主張は現代的で、有意義だ。働いて対価を得る、それは確かにやりたくてやっていることで、働かずに誰かの世話になって生きていくことも、豊かな社会では可能だ。生まれた家庭が裕福であればあるほど、なぜ働かなきゃいけないのか?と無駄な疑問が育つだろう。やりたい人だけ、やればいい。やりたくない人にやらせようとするのは、自分の価値観を押しつけているのではないか。まぁそれが自分のやりたいことなんだとわかっているのなら、僕とは友達にはなれないねーと離れていくだけだと思います。
2021/12/04
感想・レビューをもっと見る