息子と恋人 (ちくま文庫 ろ 5-2)
息子と恋人 (ちくま文庫 ろ 5-2) / 感想・レビュー
遥かなる想い
20世紀前半の英国の家族の物語である。 第一部は 著者の自伝的要素が 強いらしいが、 母の影響が 如実に出ていて 興味深い。 粗野な父と 良家出の母…そして 兄弟たち …読んでいて なぜか懐かしくなるのは 昔ながらの道徳観からなのだろうか? 若いミリアムと 人妻クララとの対比も 古典的だが、繊細で心地良い。 ポールの母への依存度が ちょっと気になるが… 最後は、 自立の曙光がほんのりと灯るような、そんな 終わり方だった。
2019/04/14
まふ
膨大なページを割いたマザコン男のうじうじ物語、と言ったらファンには怒られそうだ。母親の息子への独占欲は今日でもよく見られる風景と思われるが、大概はその場合亭主のふがいなさが原因になっている。息子のポールもここ一発の気概があれば、母親の過剰なコミットメントをはねのけてしょぼくれた結末へとは進まなかったであろう。母親が亡くなった後でもまだ自分が結婚できるだけの気力がないという男に女性は何の魅力も感じない。読みやすい文体だったが、その中身の世界に「コク」があったとは思えぬ凡作と思う。G1000。
2023/10/23
ケイ
今の言い方では、ポールと母は共依存なのだろうか。母は、夫からは得られなかったものを息子から得ようとする。客観的に見れば明らかなのに、きっとモレル夫人には無意識の行動だろう。愛する者を自由にしたい、愛する者を独り占めにしたい、愛する者の視界の真ん中には常に自分がいたいという欲求。客観的にみれないから、その欲求の醜さや恐ろしさに自らは気付けない。そして、ポール自身は、今一つ冴えない男であったからこそ、母のもっとも愛する者であろうとした。愛が呪縛であると気付いた時の彼の葛藤の場面は息苦しくなるほどだった。
2017/02/05
NAO
宗教的に厳格な母親に溺愛されて育ったポール。ポールが自分のすべてを愛する女性に与えることができないのは、彼の精神を常に母親が支配しているからだ。ポールはそれを痛いほど感じていながら、それでも、母の影響から逃げ出すことができない。この話はロレンスの自伝的要素が強いという。あまりにも強い母の影響から逃れるためにロレンスはかなり苦しんだようだが、いびつな家族環境が子どもの精神に及ぼす弊害を、わたしたちはもっと知っておくべきなのかもしれないと思った。
2016/03/08
やいっち
彼の生涯は1885年9月11日 - 1930年3月2日。 ってことは、44歳での没。 今更ながら、密度の濃い生涯。しかも、『息子と恋人』(1913年)、『虹』(1915年)、『チャタレー夫人の恋人』(1928年)。つまり、本作『息子と恋人』 は、28歳の作。読了後、訳者あとがきを読んでその事実を知り、少なからざる衝撃を受けた。 『チャタレー夫人の恋人』にしても、43歳の作。
2018/04/07
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