四人の申し分なき重罪人 (ちくま文庫 ち 12-2)
四人の申し分なき重罪人 (ちくま文庫 ち 12-2) / 感想・レビュー
みっぴー
穏和な殺人者/頼もしい藪医者/不注意な泥棒/忠義な反逆者ーーこの四人にまつわる奇妙なストーリーです。不思議なタイトルが揃ってますが、ストーリーを読み終わるころには池上氏ではないけれど、「そうだったのか!」と納得出来るでしょう。文章が詩的であったり宗教色が濃かったりと、読みにくいのが難点でしたが、チェスタトンらしい捻りをきかせたストーリー展開を楽しむことが出来ました。すごい偏見ですが、理数系が得意な方はこういった癖のある作品が好きそうな気がします。
2016/04/25
歩月るな
1930年作品。訳者・解説者ともにバークリー『第二の銃声』コンビで送る点がユーモラス。チェスタトンは決して読みやすい本ではない。が、新訳や新版がまだまだ出て来て盛り上がっている辺りチェスタトンがチェスタトンたる証左なのかもしれない。独立した中編四作と、それが語られる場は「誤解された男のクラブ」である。当時のイギリスの流行や観念が仮想敵とされた重厚な内容でそれぞれ真剣味があるのは他の中編作品と変わらない特徴かもしれないが、結末が全てロマンスというのは流石の稚気なのかもしれない。数々の逆説も恐ろしく芯に響く。
2017/02/11
OZAC
本作は<誤解された男のクラブ>の面々が語る四つの奇妙な体験談である。一番好きなのは「不注意な泥棒」。放蕩息子(ルカ伝15章)を下敷きにしているので、自然と一番宗教色が強くチェスタトンの真骨頂ともいえる作品だ。なんとなくサン=テグジュペリの『人間の土地』を思い起こさせた。
2018/10/14
三柴ゆよし
「穏和な殺人者」「頼もしい藪医者」「不注意な泥棒」「忠義な反逆者」の四篇からなる連作中篇集。各話のタイトルからもわかるように、本書はチェスタトン得意のロジックのどんでん返しがカチリとはまった、実にスタイリッシュな小説である。ミステリ仕立ての中篇ということもあり、『木曜の男』や『新ナポレオン奇譚』に比べると物語の構造はわかりやすいが、とはいえそれは決して単純という意味ではなく、チェスタトンの小説が彼一流の逆説によって精緻なまでに構成されていることがよくわかるので、チェスタトン入門にはもってこいだと思う。
2012/03/08
ぱせり
まるでスフィンクスに謎をかけられたようだ。行間には詩神が住まっている。思えば不思議な話であった。泥棒、藪医者、殺人者、そして反逆者。確かに重罪人。しかし、ラストシーンには、最大級の礼をして、幕の向こうに消えていく人々を見送りたい、と思ってしまうのだ。
2013/04/25
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