名短篇ほりだしもの (ちくま文庫 き 24-4)
名短篇ほりだしもの (ちくま文庫 き 24-4) / 感想・レビュー
メタボン
☆☆☆★ 穴に落ちて脱出するためいろいろ試すも叶わない絶望感「穴の底」、病室の天井から下がる電灯が落ちてくると思い込み実際に胸が凹む老婆「落ちてくる!」の伊藤人誉の2編が出色。織田作之助の、夫婦を題材にした「人情噺」「天衣無縫」は何とも良い味を出している。石川桂郎「少年」は編者の北村薫の読みが鋭い。芥川龍之介との交流からのエピソード、内田百閒「亀鳴くや」の玄妙さが渋い。宮沢章夫のエッセイは当然面白い。中村正常、久野豊彦は好みに合わなかった。
2020/03/19
ぜんこう
今回はエッセイや私小説のようなものも多かった。■宮沢章夫:宮沢さんが入ってるので手にとったが既読だったかも…でも面白いから良し。■中村正常:中村メイコさんの父がこんな面白い文章を書いてたとは知らなかった。■石川桂郎:床屋さんの話なのだが、死人の顔を剃るよう頼まれたり、留守を頼まれたらその一家が別荘で心中したり、やけに怖い。■内田百閒:芥川龍之介の話だが、芥川が何か病的で怖い。■里見弴:会えなかった漁師さんとのすれ違いが悲しいけどいい話。■伊藤人譽:山奥の穴の底に落ちた話、絶望感いっぱい。(コメントに続く)
2017/02/21
大阪のきんちゃん2
図書館にて目に付いたので手に。 正に「掘り出し物」デシタ! 最初は余り響かなかったのですが、剃刀日記でグッと引き込まれました。 最後の織田作はやっぱりイイです! 巻末の解説対談がまた出色で「エ!そんな風に読むの!?」と思わずもう一度本篇を読み直してしまいました。 一粒で二度美味しい感覚♪ 人情物やホラー、ハードボイルドやほのぼの系、コメディや感動モノ・・・多士済々、知らなかった作家に出会うことも出来て絶好の息抜きのアンソロジー、大変満足のいく読書になりました。
2020/03/14
うーちゃん
相変わらずコアな編集で、本好きの人はこの表紙のように、かつぶし見つけた猫みたいな気持ちになれるかもね。個人出版の版元から出ている本(の中の作品)もあり、そういうのは本屋さんではまずお目にかかれないものだし。自分の好きな本や作家を増やす、いいきっかけになってくれる一冊だと思う。片岡義男「吹いていく風のバラッド 12」志賀直哉「イヅク川」の二編が素晴らしかった。鮮やかな光景とともに、風や食べ物の香りや 水の触感まで感じられるようだった。志賀直哉なら当たり前?いやいや、凄いです。
2014/07/17
ぐうぐう
北村&宮部コンビによる『名短篇』シリーズ第四弾。いわゆるアンソロジー定番の作品を選ぶというよりも、どこから見つけてきたのかと思わせる埋もれた短篇を紹介するのが、このシリーズのユニークなところだ。今回はタイトルにもある、そんなほりだしものが楽しい。とぼけた妙の宮沢章夫のエッセイから始まり、片岡義男の研ぎ澄まされたショートストーリー、そして奇妙としかいいようのない中村正常のユーモア小説。こんな小説、読んだことない! それでいて、第三部からの芥川、志賀、百閒と連なる並びの壮観なことよ。(つづく)
2013/05/18
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