とりつくしま (ちくま文庫)
とりつくしま (ちくま文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
歌人の東直子さんによる掌編小説集。番外篇を含めて全部で11篇からなる。いずれも亡くなったばかりの死者による一人称語り。来世の入り口に居る「とりつくしま係」が、この世の物体にとりつく手助けをしてくれるというファンタジックにも大胆な発想。幕開け第1話の「ロージン」なんかはぐっとくる。もっとも、後は基本的に同じ展開なので、やや慣れてきてしまうのだが。それでも後半の「日記」のせつなさは格別のもの。最終的には死者の諦念に収斂してゆくのだが、そのことは同時にこの世の誰かへの執着を哀切に語るものでもあるだろう。
2021/07/15
馨
この世に未練を残して死んだ人が、モノにとりついて大切な人のそばにもう一度やってくる短編集。1つ1つの作品が短いので、私的にはもう少し掘り下げて欲しかった!と思うものばかりでした。ジャングルジムの話とマグカップの話が良かったです。補聴器の話は、もしかすると近い将来私も…と言う気がしてしまいました。私が今使っている何かにも、亡くなった身内がとりついてほしい。
2017/02/25
yoshida
想いを残して亡くなった方が「モノ」に宿る短編集。マグカップ、日記帳、マッサージチェア、ロージン、白檀の扇子等。共通する想いは大切な人の近くにいたい。想いを残さずに生きることが出来れば最善である。しかし、なかなかそんな生き方は出来ないのではないだろうか。この作品を通じて伝わる大切な人への優しさ。そして残された人達のそれぞれの想い。残された人達の想いが少しずつ変わってゆく。大切な人の死を受け入れつつ、胸に残しながらも、新しい明日を歩き出す。その想いの移ろいが、切なく優しい感動を呼ぶ。素晴らしい作品に出逢えた。
2017/12/16
射手座の天使あきちゃん
あとに心は残れども、残しちゃならぬこの身体 そんな切ない思いの丈を、願掛け紙書き息吹きかけて この世に届けよ「とりつくしま」 読むほどに切なさが溢れる短編集でした。 番外編の「びわの樹の下の娘」ちょぴり怖かった! <(^_^;
2016/11/30
やま
とりつくしま 2017.11発行。大活字本 埼玉福祉会。 なお、本の登録は、「とりつくしま (ちくま文庫) 2011.05発行」で行います。 ロージン、トリケラトプス、青いの、白檀、名前、ささやき、日記、マッサージ、くちびる、レンズ、番外編・びわの樹の下の娘の短編11話。 死んだ人が、生前の人の持ち物にとりついて、生前の想いを語る物語です。 読みやすい、読んでいると詩を読んでいるような気がします。 この本は、いいです。 母の想い、息子の想い、初恋を貫いた想い…などが胸にしみて来ます。
2020/04/07
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