ちくま哲学の森 3 悪の哲学 (ちくま哲学の森 3)
ちくま哲学の森 3 悪の哲学 (ちくま哲学の森 3) / 感想・レビュー
ケイ
さすが筑摩書房。悪の毒にあてられた。苦しくなるが、1つずつ丁寧に読み返したい衝動を持て余している。悪とは? 悪に切り込み、悪を解釈し、飲み込んで、その上で選んできた短編や抜粋。殺人犯の調書もある。真の悪人に良心無いのだと何人も殺した男が言う。そんな男は妻には優しく彼女を愛した…慈しむことに良心は介在しない。アウグストゥスが語る仲間と悪を行う時の高揚感。モームがさり気なさそうに語る男は、実は悪魔を心に飼っているのかもしれない。最初の銘文が見事。『斯門に入る衆庶、一切の宿望を捨離よ』ダンテ 地獄篇第三歌
2017/11/11
かんやん
アンソロジー。悪は言葉を持たないといった思想家がいる一方で、「殺人がオリンピック競技なら俺は金メダル」と嘯いた殺人犯もいる(本書の話ではない)。本書では、本物の連続殺人犯の調書まで収録されてるが、面白くない。そもそも、人を興がらせるために書かれたものでもない。「悪人とは、いかなるものであろうか。本当の悪人に巡りあってみたい」などと知識人(花田清輝)が頭でコネ回した悪などつまらないもので、宮沢賢治の簡潔な童話の最後の一行「みんなはすっかり感服しました」の方が、遥かに説得力がある。いや、感服しました。
2021/04/17
Maiラピ
藤沢周さんお薦めの一冊。1990年発行の文庫版。編者は鶴見俊介,安野光雅 ,森毅 ,井上ひさし,池内紀。1200円の文庫って高い気がするけど、さすが!多様性とともに充実した内容。宮沢賢治から坂口安吾、ニーチェ、マキアヴァリ、マルクス、色川武大、ドストエフスキー、柳田國男、親鸞。。。個人的にはオコナーの“善良な田舎者”が身近にありそうで怖かった。悪や善の概念って、宗教から生まれたものだと思っていたが、いろんなアプローチの仕方があるんだな。
2012/04/14
たんたん麺
わたくし親鸞においては、ただ、念仏を申して弥陀に助けていただくがよいと、よきひと〈法然〉のおおせをいただいて信ずるだけであって、そのほかにはなんのいわれもないのである。念仏は、ほんとうに浄土に生まれるたねであるかどうか、それとも、地獄におちる業であろうやら、わたしはまったく知らないのである。たとい法然聖人にだまされて、念仏を申して地獄におちたからとて、けっして後悔するところはない。歎異抄に入ってんだけど、信じることとはどういうことかわかった!
2014/05/05
ハルト
読了:◎ さまざまな悪について。人が成すことの、いったいなにが「悪」になるのか。悪の底には悲哀が潜むように、憎しみがあるように、苦悩から生まれいでたように、そして「絶対悪」が存在するかのように。人はおのれの欲望のためになら、悪に手を染めることも厭わない。ただ純粋に悪となる。そういう意味では悪は、案外近くにあるのかもしれない。一番ぞっとしたのは、宮沢賢治の「毒もみのすきな署長さん」で、後悔も反省もなく、笑顔で死んでいける、その感服するほどの悪人ぶりが見事だった。
2021/05/15
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