トーベ・ヤンソン短篇集黒と白 (ちくま文庫 や 29-3)
トーベ・ヤンソン短篇集黒と白 (ちくま文庫 や 29-3) / 感想・レビュー
mocha
風変わりな登場人物たちの短い話17篇。同調するのでなく遠くから眺めているような不思議な味わい。どの話も映像が浮かんでくる。セピアカラーの写真が頭の中に何枚も焼き付けられたような読後感だ。「灰色の繻子」が良かった。一番わかりやすいまとめ方だったからかもしれない。表題作は先日読了した『憑かれた鏡ーエドワード・ゴーリーが愛する12の怪談』挿画製作中のゴーリーがモデルらしい。これを読んで改めて挿画を見たら、違って見えるかな。
2016/09/13
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
ほわんとした世界を期待していると、横っ面を張られた気分になります。全17編の最初『砂をおろす』は、荒々しい男達に交じり肉体労働に汗を流す少女が主人公。作業の手を休め空を見上げる。陽光は隠れている。希望もまだみえない。思い出したのは中学校の図書館。マンガの延長で『ムーミントロール』を手に取った時のぞわぞわした感覚。本書は『ポストムーミン』と呼ばれる小説群の中で【ダークサイド】を集めた短篇集。男が描くハードボイルドの隠し味、甘いリリシズムなど皆無。究極のドライ・マティーニのような味わい。孤独。でも後味は爽快。
2014/06/10
たぬ
☆3.5 ムーミンじゃないやつはどんな感じかな?と短編集に手を出してみた。ムーミンを描き終えた後の1971年から1991年にかけて書かれた17編。そういうコンセプトとはいえ圧倒的に黒優勢です。陰です。間違っても陽ではない。「夏の子ども」のエリスにしても「クララからの手紙」のクララにしても、現代なら絶対に何かしらの診断が下ってると思う。読んでいるとムズムズしてくる。あああああーーー!!と叫びたくなる。
2023/08/25
テツ
ヤンソンといえば最初に思い浮かぶのはムーミンシリーズなんだけれど、短編集はもっと強めな毒とエスプリを効かせながら世間を眺めて創り上げた物語ばかりで更に面白い。登場人物たちに自分を重ね合わせ感情移入するのではなくあくまで俯瞰しながら他人の人生を味わうという感覚。様々な物語を眺めていると世界はそれを主体として認識している人の数だけ存在するという当たり前のことに気づく。
2017/05/24
アーちゃん
図書館本。ムーミン以外の本としては初の著者ですが、思ったほどダークでもなくむしろさらっと読んだ一冊でした。「夏の子ども」「花の子ども」「記憶を借りる女」が印象的で、特に後2篇は解説にある「ビートニク」世代ならではの栄枯盛衰というか時代の流れが出ていて、ビートニクとしてはジャック・ケルアックの「路上」しか読んでいなかった事もあり、興味深く読めました。
2016/10/25
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