幻想小説神髄 (ちくま文庫)
幻想小説神髄 (ちくま文庫) / 感想・レビュー
HANA
アンソロジー集。収録されている作品が悉く名作で外れなし。『怪奇小説精華』が「向こう」から「こちら」へと侵食してくるような作品が多いのに対して、こちらは「向こう」への憧憬を語った作品が多いように思えた。それが異界にしろ無可有郷にしろ妣が国にしろ、手の届かない哀切さというものを読んでいたら痛切に感じるなあ。それを手に入れた作品はほぼ全てハッピーエンドとなってるし。名作集だけあり「黄金宝壺」「白魔」「大地炎上」「なぞ」等既読のものも多かったが、読み返せば読み返すほど新しい発見があるのが名作の名作たる由縁かなあ。
2013/10/22
藤月はな(灯れ松明の火)
「天堂より神の不在を告げる死せるキリストの言葉」は虚無があるからこそ、生者は希望と信仰を持ち得るという宗教論でのパラドックスめいた教えを思い出させる問い。「金髪のエックベルト」は妻の過ちのために破滅が飛び火した騎士の悲劇が悲惨すぎます。「ヴェラ」のもっとも合理的な論理の帰結の突き付ける恐ろしさ、「火の七日間」(風の谷のナウシカ)を連想させる「大地炎上」、子供が消えた衣装箪笥を誰も気にしない恐ろしさが募る「なぞ」、自然を支配できる理性を唯一、持つ定義される人間とそれも許す自然の永遠の神秘を描く「精」が印象的
2013/02/09
かわうそ
私のような初心者にとっては少々手強い作品もあったけど、古風な訳文も内容にぴったりあっているものが多くて全体としての読後感は抜群。「ヴェラ」「アウル・クリーク橋の一事件」「クレプシドラ・サナトリウム」などが特に好み。
2013/09/28
misui
『怪奇小説精華』に続いて読了。この巻は曖昧模糊としているものの芯から寒からしめる魅力があり、まるで厚い霧の中を手探りで進むように感じられた。リラダン「ヴェラ」のこの世ならぬ愛、霊妙不可思議な世界が顕現するフィオナ・マクラウド「精」、マッケン「白魔」、ダンセイニ「バブルクンドの崩壊」、透明な悲しさが残るシュペルヴィエル「沖の小娘」、シュルツ「クレプシドラ・サナトリウム」の彼岸での日々。幻想はそうそう容易に振り切れるものではなく、あるいは自分はこれからもずっと霧に囚われたままなのかもしれない。
2013/02/12
ふるい
一口に幻想小説といってもそれぞれ趣が違っていて飽きずに楽しめた。「黄金宝壺」は訳文の読み辛さに苦戦。「光と影」のじわじわ来る怖さ。「クレプシドラ・サナトリウム」の陰鬱な雰囲気がたまらなく好き。そして最後の「アレフ」がやっぱり凄かった。
2017/02/09
感想・レビューをもっと見る