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包帯クラブ (ちくま文庫)

包帯クラブ (ちくま文庫)

包帯クラブ (ちくま文庫)

作家
天童荒太
出版社
筑摩書房
発売日
2013-06-10
ISBN
9784480430151
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包帯クラブ (ちくま文庫) / 感想・レビュー

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アナーキー靴下

映画化された頃からずっと気になっていたけれどなかなか手を出せずにいた。誰かが傷を受けた場所に包帯を巻く…相手の痛みへの共感のような話なのかと、勝手に想像していた。そして、もしそういう話だとしたら、読んでいてつらくなったり、不安になったりするんじゃないかと少し怖かった。でも違った。もっとずっと優しさに満ちていた。必要なのは共感じゃなくて、相手が傷ついているかもしれないという想像。生きている限り根治なんてできなくて、対症療法で凌いでいくしかない。その時、包帯を巻いてくれる誰かがいたら本当にホッとすると思うよ。

2022/04/27

dr2006

包帯は傷を覆うもの。包帯を巻くと苛立ちや悲しみが薄れ心が少し軽くなる。傷をうけた場所だよと自覚して、周りにも認識してもらう。装丁のイラストの高校生、ワラ、ディノ、タンシオ(いずれもあだ名)は、傷ついたことに関する場所や物に包帯を巻き、傷ついた人の心を癒すという”包帯クラブ”を立ち上げた。「心の傷に白い包帯」というちょっと観念的なところを突くプロットは直木賞の悼む人のベクトルにも通じる。自分以外の人の気持ちへの想像力と思い遣りを耕す物語だった。

2018/07/29

青蓮

初読み作家さんです。タイトルに惹かれて手に取りました。心が傷ついた所に包帯を巻いていく。すると気持ちがすっと楽になる。「包帯を巻いて心が軽くなるのは、傷が治ったわけじゃなく、〈わたしは、ここで傷を受けたんだ〉と自覚することができ、自分以外の人からも〈それは傷だよ〉って認めてもらえたことで、ほっとするんじゃないかと思った」包帯を巻くのは癒しの儀式。青春小説なので、青臭いところもあるけれど、それが却って新鮮に感じました。十代の少年少女にぜひ読んで欲しい作品。

2015/06/12

ナマアタタカイカタタタキキ

心の傷にも包帯を、という発想は優しい。他人からは勿論、自分でも可視化できないからこそ「これしきのこと何でもない」と、痛みを痛みだと自覚しないこともある。知らないうちに治癒してしまうことが殆どでも、小さな傷口から細菌に感染して膿んでしまうこともあるのだから、大袈裟に痛がることはしなくても、傷を傷だと認識することは大切だ。包帯を巻いてあげる行為は、相手のその痛みの存在を認めることであるけれど、手当てをする人間にも少なからず救われる部分があるのではないか。…但し、読み物として私自身が楽しめたかはまた別の話(笑)

2020/05/18

みも

著者作品群の中でもこれ程優しさに満ち、リズミカルで軽妙な筆致を他に知らない。他の作品群が泥濘の匍匐前進だとすれば、本作は水溜まりに足を浸しつつも軽快に跳び越え小躍りする歩みだ。自己と他者との交感と巡礼的な点に於いて『悼む人』との類似性が見られ、それはあたかも『悼む人』へのプレリュード…もしくは素描の様なエチュードといった印象を抱かせる。換言すれば、本作のモチーフを昇華させた完成形が『悼む人』なのだと思う。ティーンエイジャーの繊細で移ろい易い感興を丁寧に描く。過去に何かを棄てて来た僕らが読んでも感銘は深い。

2018/04/13

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