移行期的混乱: 経済成長神話の終わり (ちくま文庫 ひ 22-1)
移行期的混乱: 経済成長神話の終わり (ちくま文庫 ひ 22-1) / 感想・レビュー
浅香山三郎
著者も断るやうにあくまで現状認識について書かれた本。人口が減少し、経済成長が止まるといふことについては、多くの識者が書いてはゐるけれども、人々の心性の変容についても考察する。人々の心性の変容過程を追ふと、社会の包容力の貧困化も顕著になつたことがわかる。確かに、「○○すべきだ」といふ答へは書かれてゐないが、これからの社会がどういふ社会かを知る上では読まれてもよいだらう。忙しい人は、平川さんと鷲田さんの対談だけでもよいかも。
2016/05/28
Francis
5年間積読してた本。人口増加、経済成長を続けていた日本社会が今は人口減少、低成長期を本格的に迎えつつある移行期であり、それゆえに混乱しているのだ、とのが言うのが趣旨。社会の移り変わりを人間の成長と重ね合わせてこれから成熟期を迎える社会について戦後の労働感の変遷と合わせて考察。ただ著者の議論の常らしいが、状況を客観的に考察するだけで対策を考察するに至らないのは解せない。人口減少下でも経済成長の余地があることを示したアベノミクスや成熟社会を迎えてもある程度の出生率を確保できている北欧諸国を見ると尚更そう思う。
2018/08/14
Katsuto Yoshinaga
少子化傾向の原因を、将来の不安/経済的な不安/社会的な不安と推論し、経済的な支援策や経済成長戦略が10年以上も策定され続けている。この推論にずっと違和感を感じ、経済成長という言葉に不信感を抱いていた。なにかで「問題は成長戦略がないことではない。成長しなくてもやっていけるための戦略がないことが問題だ」という著者の言葉を読み、本書を手に取った。経済と政治の戦後史と民主主義の捉え方、かつての街頭デモは仲間が集う祝祭のようだったという感じ方等々、小熊英二氏の評論と近似していて面白く興味深い。(コメに続く)
2024/04/18
かりんとー
(古本)この本の時点より状況は更に悪化している。まだ移行期の途中なのだろうか?一番最後の対談が面白かった。
2020/12/13
たびねこ
人口減少時代に突入した日本の姿が、一人の生身の老人の姿に見えてきた。それほどリアルに描かれている。だからといって悲観することはない。老人なりの幸福な時間があるはずである、というのが著者のいわんとすることの一つだろう。
2015/01/11
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