文明論之概略: 現代語訳 (ちくま文庫 ふ 44-1)
文明論之概略: 現代語訳 (ちくま文庫 ふ 44-1) / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
名前は知っているけど、中身は読んだことがなかった『文明論之概略』。それが現代語で読みやすくなっているのがこの本である。今、読めば、余りの西洋文化への礼賛ぶりに首を捻る。しかし、本書は外国との対等な関係を結ぶべく、国の独立を推奨している。ハリボテとしての文明を目的にするよりもそれを手段にして人々に貢献する事、生得的な徳と後天的な智のそれぞれの効能や規制の大切さ、善人が為す悪と悪人が為す善などを説いている部分が印象深い。
2019/06/30
おさむ
近代日本史の古典を今さらながら初めて読む。現代語訳が読みやすい。約140年前の思想なのに全く古びていないことに驚愕する。明治の初期にこれだけの主張を展開できる諭吉先生、やっぱりcoolです。さすが1万円札!笑。冷静かつ客観的に日本の置かれた状況を分析し、先ずは自国の独立を最優先させるべきだと説く。自由の気風を重んじ、異端妄説こそが世の中を進歩させる。あの丸山眞男が愛読し、3冊に及ぶ岩波新書の読本を残しただけあります。これからも何度も読み返したい。
2017/02/09
姉勤
明治8年に著されたとは思えないほどの、人間社会への通底した洞察力。文明とは、文理を進めつつも旧倫を軽んぜず、道徳を深めても教条に溺れず、知の進歩と徳の伸張を両輪として、個人を高め集団に及ぶ。科学技術も法律も伝統も宗教も、人を育てる乗り物であって、それらが主ではないと。付録する西洋文明と日本文明への概論は、最近流行りの、白人的な史観を外れた世界史論を先取りした風にも見える(まあ、戦後に漂白されたか、去勢されたか)。世界大戦も冷戦も共産主義も経ずして辿り着いた結論には、さすが最高額紙幣の顔は伊達ではなく。
2017/02/09
道楽モン
明治8年に刊行された福沢諭吉の代表作も、まずは現代語訳にて読む。当時の混迷した社会状況下で、自主独立の国家形成を目標に見据え、ひとりでも多くの国民が智恵を獲得することで国家的気風を醸造する必要性を語っている。彼の論旨も、現代語だからこそ容易に理解でき、入口として有り難い。そして今、岩波文庫を片手に丸山眞男『文明論之概略を読む』に取りかかってます。それにしても福澤の例示は、適切で判りやすく、しかもユーモアがある。ダメ出しも手厳しい。哀しいのは、福澤の提言に対して我が国は、まだまだなんだと痛感することだろう。
2024/06/05
ホシ
欧米列強が日本に押し寄せる中、危機感を持って、でも、民衆に悲壮感を与えまいとして自国独立の重要性を説こうとした福澤の気迫が伝わる一冊です。「日本は西洋に比べて徳が劣る国という訳ではない。しかし、智は決定的に劣っている。どんな政治体制であろうとも、どんな宗教を信じようとも、まずは古い慣習から脱却し、人民一人ひとりが絶えず智徳を磨いて報国心を持つこと。これが文明国の初歩の姿である」と解しました。現代情勢を考える上でも非常に示唆に富む内容で福澤の博識と先見の明、そして比喩の巧みさに感服するばかりでした。
2019/10/26
感想・レビューをもっと見る