異形の白昼 恐怖小説集 (ちくま文庫 つ 19-2)
異形の白昼 恐怖小説集 (ちくま文庫 つ 19-2) / 感想・レビュー
buchipanda3
筒井康隆氏選出の奇譚小説アンソロジー。昭和44年刊で筒井先生自らを若輩者と呼ぶ頃、当時第一線で活躍していた作家の作品から選ばれたもので良作揃い。恐怖にも様々なものがあって、ゾワッ、怪異、奇妙、異常心理、ミステリと多彩。読み終えてから、あれこれ場面を思い返して嫌なのにその感覚を反芻して焦ったり、読後の余韻がずるずると後を引いたりする作品があった。小松左京氏の「くだんのはは」は以前から読みたかった作品で、戦争への不安感と異形なものへの恐怖と好奇が混在。他には「母子像」「甘美な牢獄」「長い暗い冬」などが好み。
2019/09/04
藤月はな(灯れ松明の火)
『仕事ください』はHoLicでの猿の手のラストを思い出し、ぞっとしました。『暗い長い冬』はオチまでの論理的展開が見出せず、苦悩しました。印象深かったのは神童だったけどネグレクトされている子供の狂気を描いた『孤独なカラス』と見つけたのは爛れてそれでも幸福な自身の幸せだったという『甘美な牢獄』。『緋色の堕胎』は想像すると痛くて屈辱で怖くて悲鳴が洩れそうになります。
2013/11/17
キンモクセイ
恐怖小説集とあるが、怖いよりも不気味さのが勝る。殆ど初読み作家さんばかり。時代背景の古さが余計に不気味な感じを醸し出しゾクっとさせられた。星新一さん、恐怖小説を書かれていたのか。遠藤周作さん「蜘蛛」や小松左京さん「くだんのはは」筒井康隆さん「母子像」が特に良かった。気持ち悪さと不気味さに拍車をかけたのは、図書館本で本当に汚れて色も変わっていたからだ。ある意味これが気持ち悪さを倍増させていたのかもしれない。読みやすい恐怖短編集。
2019/10/19
Kouro-hou
1969刊行の怪談アンソロジー。当時の大物現役作家揃いで書き下ろしでない作品を集めており、全体的なくくりとしてはモダンホラーになるのだろうか。怪異・スーパーナチュラル系よりも、この後盛んになるサイコ系やヤバイお子さんネタが多め。どれも力作・傑作揃いですが、今現在としては流行を過ぎて食傷気味なサイコ系よりも、シンプルな怪異系に惹かれるものを感じたりも。星新一「さまよう犬」なんかは普通にイイ話ダナーと思っていたのに、恐怖ってどういうこと?何か見落としてる??と思わせる辺りが編者・筒井康隆さすがだな、と。
2015/07/09
有理数
そこにいる異様な何か、自分自身の存在の揺らぎ、音声、死体、少女、少年、労働、悪魔――。様々な「恐怖」が詰まった筒井康隆が編者のアンソロジー。「恐い」「怖い」「嫌」など、迸る感情は様々だが、どれも重苦しく、清々しい気持ちで読み終えるものはひとつもない。何かに圧迫され、問いただされ、追い駆けまわされるような、それでいて、じわりと水滴が全身を湿らせるような不快さもある。戸川昌子、結城昌治、笹沢左保、都筑道夫など、ミステリの領土から聴こえる恐怖も。高水準の作品集だが、ベストは筒井康隆「母子像」。これは確かに神品。
2019/01/27
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