日本幻想文学大全II 幻視の系譜 (ちくま文庫 ひ 21-6 日本幻想文学大全)
日本幻想文学大全II 幻視の系譜 (ちくま文庫 ひ 21-6 日本幻想文学大全) / 感想・レビュー
青蓮
室生犀星の「蜜のあわれ」が読みたくて手に取りました。室生犀星は初めてでしたが、非常に私好みの作品で楽しく読みました。本書は幻想文学21作品を収めた豪華なアンソロジー。私が大好きな川端康成の「片腕」、梶井基次郎の「Kの昇天」が入ってるのが嬉しい。甲乙付け難いけれど、初めて読んだ作品の中では吉村昭の「少女架刑」がお気に入りです。吉村昭の他の作品も読んでみたい。泉鏡花の「化鳥」、夢野久作の「木魂」、谷崎潤一郎の「魔術師」、中井英夫の「地下街」等、どの作品も超絶品です。怪しい幻夢の世界を逍遥したい人へ。
2017/07/09
藤月はな(灯れ松明の火)
この巻は、泉鏡花、埴谷雄高、宮沢賢治、赤江瀑など好きな作家の作品がたくさん、収録されていて嬉しかったです。『猫町』は完全に表紙画やパロル舎での絵本も担当なされた金田女史のジェームズ・アンソールばりの猫の大群(時には芥川龍之介などの人間もあり)で脳内再現されます。ビアズレーの画風が浮かびそうな谷崎潤一郎の『魔術師』にうっとりしつつも、死した後も解剖などに使われ、用済みになったら家族や医者たちにも疎まれる少女の末路を描いた『少女架刑』のグロテスクで冷酷なのに美しい描写に背筋が震えました。
2014/02/25
HANA
アンソロジー。テーマは幻視、この世ならぬ光景を見た話が時代順に収められている。前巻よりは現代に近いということもあり、ほぼ全ての作品が既読だった前に比べ、今回は未読のものも多くて助かった。それでも戦前の作家はほぼ全て傑作揃い。鏡花の「化鳥」でアニミズムの極みに酔うも良し「猫町」でどことも知らぬ異界を彷徨うも良しという具合。後半の現代に近い作家では「少女架刑」「春の寵児」が傑作。赤江瀑はともかく吉村昭が斯様な上質な幻想を書いているとは思わなかった。やはり傑作揃いなので誰が読んでも興味が持てる一冊だと思う。
2014/09/07
まさ
既読の作品が多いが、よいものは何度読んでもよい。こうやって編む東雅夫さんはさすがですね。アンソロジーで読んで、またそれぞれの作者の本を手にする…。贅沢な繰り返しをさせていただきました。
2021/04/23
辛口カレーうどん
現実世界の鏡に映る、幻想世界を描いた21篇。その内6篇は既読でした。合わないものもあったが、概ね満足。『少女架刑』は圧巻。魂という目に見えないものが、あたかも手に触れられるような、質量を得たように感じる作品。崇高な雰囲気に、読み手も背筋が伸びるような心持ちになる。『猫町』『デンドロカカリヤ』も好き。『ひかりの素足』もいい。宮沢賢治は冬の冷たい空気を感じる文章で、悲しい話が多いが美しい。
2015/12/18
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