僕の明日を照らして (ちくま文庫 せ 11-2)
僕の明日を照らして (ちくま文庫 せ 11-2) / 感想・レビュー
s-kozy
その家族の環境により生まれながらにしてある一定の役割を背負わされてしまう子どもがいる。父を早くに亡くした母子家庭で育った本編の主人公、中二の隼太もそんな子ども。母親の再婚相手から暴力を受ける。本当は助けてと叫びたい、こんなお父さんは嫌だと告発したい、でもそれはできない、だって僕は女手一つで育てられた(のにしっかりした)子どもだから。僕は期待された役割を演じきった。本当に照らして欲しいのは僕の明日ではなくて、今なのに。一人で闇の中で過ごすのは嫌なんだ。でもそれは誰にも言うことはできない。
2015/10/20
ユザキ部長
全てを切り離し泣いている夜。部屋じゅう必死で誰かを探しながら、泣き叫ぶ。一人誰も手を差しのべてくれない。学校では大人びてるつもりでもまだ幼いのかも知れない。女手一つで育った僕は常に母親を思い育つ。そんな中、再婚相手の父親が来てくれた。正月とクリスマスが、明後日と明日がいきなりやって来るぐらい嬉しかった。 だから虐待でもなんでも受け入れるしか生きれない。ぐんぐん成長していくのがみんなで楽しい筈だったのに。もう少し母親は家族と居るべきだったのではないかと思う。子供だって賢こすぎなのかも。難しい。
2015/06/19
さてさて
児童虐待という非常に重いテーマを取り上げたこの作品。そんなテーマを描く瀬尾さんは執筆当時、現役の中学教師の立場でした。中学における授業風景、部活への取り組みなどのリアルな描写は現場の経験が反映されているのだと思います。報道されるニュースの過激さに感覚が麻痺してしまっている児童虐待について、独特な視点、立ち位置から鋭く斬り込んだこの作品。瀬尾さんならではのあくまで冷静な、あくまで淡々とした筆致が、悲惨さばかりに目が行きがちの児童虐待について、逆に冷静に視野広く考える機会を与えていただいた、そんな作品でした。
2020/09/03
エドワード
瀬尾まいこさんにしか書けない、家族の胸キュン物語。中学二年生の隼太の義理の父親、勇ちゃんは普段は優しいのに、突然キレる。この豹変がすごい。言葉から変わり、隼太は気絶する。まるでジキルとハイドだ。でも隼太は普段の勇ちゃんが大好きだ。勇ちゃんも自分の病気?を解っていて、二人で解決しようとする。虐待日記をつける。カルシウムの多い料理を作る。母親に内緒だから結構難しい。隼太の未来はどうなる?こんな思いやりあふれる虐待話は他にないな。学校では結構カッコいい隼太、家庭ではまるで子供扱い。思春期の矛盾ってヤツだ。
2015/03/11
papako
読み始め、少し戸惑った。登場人物の年齢がわからなくて。これも『家族』の物語。キレて虐待をしてしまい、親子を終わらせようとする父親、優ちゃん。そんな義父でもすがりつく息子、隼太。二人でなんとか親子になろうとしていたのに、あっさり母親に無かったことにされてしまう。隼太は殴られても一緒にいてくれる父親が欲しかった。母親は、息子の陰は見ずに守ろうとする。また『家族』ってなんだろう。と考えさせられる。けど、正直この本では辛いとしか思えなかった。父親である優ちゃんが、見えてこなかったからかも。
2018/09/30
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