経済小説名作選 (ちくま文庫 し 46-1)
経済小説名作選 (ちくま文庫 し 46-1) / 感想・レビュー
KAZOO
経済小説のアンソロジーです。どこかで読んだというイメージがありましたが、日本ペンクラブが編纂した集英社文庫のアンソロジーで出版されていたものなのですね。葉山嘉樹の「セメント樽の中の手紙」や横光利一の「機械」などは何度か読んだことがあります。当時私の印象に残ったのは深田祐介の「あざやかなひとびと」と開高健の「巨人と玩具」です。城山三郎さんと山田智彦さんの対談解説が参考になります。
2024/02/07
itoko♪
葉山嘉樹著『セメント樽の中の手紙』のみを読むために、図書館で借りました。私が中学生の時に国語の教科書に載っていて、当時 強烈な印象を残した作品でした。現場労働者の男性が、セメント樽の中から 紙切れに書かれた手紙を見つけるんですが、そこには衝撃の告白が…。大人になった今読むと、当時とは違った感情を抱きました。でもこれを教科書に載せようと思った方は誰なんだろう。
2016/09/10
chie
経済小説...今風に言えば、お仕事小説となるのだろうか。対談解説と文庫版解説を読んでも、その違いは私にはよくわからなかったのだけれど、10作全篇を読んでみて、『巨人と玩具』(開高健著)は、同時代の8作と比べて、際立っている様な気がした。面白かったのは『黄色い微笑』(井上武彦著)。金儲けに目がくらんでいる人の内面が描かれている。他人の働く姿を知ることは、人間の他の生理的な行動を覗き見することと同じくらい、本当は、いやらしいことなのかもしれない、と思った。
2024/01/03
むねくに
表題どおり「名作」の短編10作でした。そもそも城山三郎の「輸出」を読みたくこの本を手にしたところ、どの作品にも特異な背景のもと読み応え豊かな展開に堪能しました。巻末で城山三郎と山田智彦の対談があり、「経済小説とは」を語っていますが、それぞれの作品に人間関係から生じる精神的な破綻・狂気があるし、しかもどうもハッピーエンドには至らない。あ、「下町ロケット」も経済小説かなぁ???。
2018/11/04
糸くず
消費社会のダイナミズムが息づく「巨人と玩具」、猛烈な台風によって発生した大雪山の風倒木の処理に執念を燃やす木材業者の常軌を逸した闘い「樹と雪と甲虫と」、〈冷笑〉も〈熱狂〉も太刀打ちできない〈労働〉という空虚「聖産業週間」がベスト3。皮肉の利いたタイトルが光る「あざやかなひとびと」も忘れ難い。ジェームズ角田と高山のライバル関係に見せかけた共犯関係は、好きになってしまう人がきっとたくさんいるはず。
2017/03/28
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