ピスタチオ (ちくま文庫 な 41-2)
ピスタチオ (ちくま文庫 な 41-2) / 感想・レビュー
KAZOO
長編です。長編ながら結構事件(というにはあまりに些細なことが多いのですが)がいろいろあったりして、私は飽きないで一気に読んでしまいました。アフリカに行くのもあまり明確な理由もないのですが違和感がなくさらっと引き込まれて読んでいました。私は犬の病気のところでかなり時間をかけてしまいました。読んだ後で何かを考えさせtくれる本だと思いました。
2015/09/04
jam
主人公女性のペンネーム「棚」の本名は翠。作品ではピスタチオグリーンのようにアフリカの赤銅の大地に萌芽する何かを探し旅する。それは呪術医という憑代をとおし、世界のバランスの維持に必要な干渉の表出を翠に投げる。この壮大な物語は、たとえば民族紛争を、たとえばエイズという病を、そして世界規模の気象異常を描く。翠は、表出された干渉に、緩衝という役割を担う。それは、鎮めたり創造するというものではなく「慰め」という終わりに物語を導くことである。あらゆる存在の根はひとつなのかも知れない。そう思わせる力がある物語だ。再読。
2021/02/22
ふう
これは物語なんだと意識しながら読まないと、梨木さんの日々を綴ったノンフィクションかと勘違いしそうでした。繊細でどことなく儚げなイメージの作者でしたが、内に秘めたものは強く、独自の価値観と行動力を持った人なのだと、この不思議な作品で知りました。「春になったら…」でもアフリカの人々が登場しましたが、この作品にもアフリカの大地に生きる人々の、自然と深く結びついた暮らしや精霊、呪術、祈りなど、信仰と言えるような世界が描かれています。日本での飼い犬の病気も友人の死も、そしてアフリカの暮らしも、赤道西風が地球を→
2015/04/17
Nao Funasoko
知らない世界を想像させてくれることだとかわからない感情を解説してくれることだとかが小説の魅力の一部であるとすれば、本作はその両方を兼ね備えた作品だった。読みはじめはややとっつきにくかったものの徐々にドライブ感加速していった。多層化された物語が後半畳みかけるように纏まっていく様は心地よい読後感だった。
2019/03/14
chantal(シャンタール)
呪術、と聞くと何か途上国のよくわからない怪しげなもの、と思うかもしれない。でも、私たちは何か目に見えない力に生かされているのでは?と思う事もある。そんな神秘的なもの、精霊、水の流れ、鳥の渡り。梨木さんらしさが沢山詰まったお話。行った事のないアフリカの大地が目の前に見えるような気がする。アフリカこそが人類誕生の地との説も信じたくなる。紛争や気候変動でどんどん壊れて行く自然を止めようがない事へのもどかしも感じる。とても大切な物語を読んだ、そんな気がした。
2023/04/29
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