虹色と幸運 (ちくま文庫)
虹色と幸運 (ちくま文庫) / 感想・レビュー
ユメ
最近「大人になる」ってどういうことだろう、なんて思う。どうしても、周りが大人であるのに対して、自分が子どもであるような気がしてしまうのだ。私の少し先をゆく30代の主人公たち。彼女たちもまた「ちゃんとした大人とは」と悩んでいるのを見て、みんな意外と、年を重ねても同じことを考えているのだなと思った。はっきりした答えはない。それを知って感じるのは、軽い諦めと、希望。「ちゃんとした大人」になれないままでも、自分の足で歩いていくことはできる。日常の中の些細な事象がきらっと光り、雲の隙間から虹が覗いたような読後感。
2016/11/26
エドワード
私たちはいつ大人になるのだろう。江南亜美子さんの解説がテーマを明快に示している。主人公は三十歳の同級生、大学職員の本田かおり、イラストレーターの水島珠子、念願の雑貨店を開いた春日井夏美。夏美だけ結婚して三人の子供がいる。季節の彩り、街のざわめき。物語自体は終始穏やかだ。かつてのトレンディドラマのような、三人を取り巻く群像劇の楽しさ。かおりは年下の役者志望の準之助と同居、珠子は昔の恋人・新太と再会する。結婚はまだ先かな?家族がいれば心配事が増え、いなければ将来が不安だ。三十歳のリアルを描く柴崎さんの優しさ。
2023/02/10
niisun
久しぶりに再会した3人の女性を取り巻く人生模様。と言っても再会から1年間をじっくりと描いた作品です。たった1日の出来事を一遍の小説にした、行定勲監督によって映画化もされた柴崎さんの第一作『きょうのできごと』を思い出しました♪ 「大人になるとは?」「ちゃんとした人間になるとは?」。モラトリアムではなく、しっかりと地に足付けて生きていながらの葛藤は、様々な世代の共感を得そうな気がします。 しかし、こういう荒波経たたない凪いだ物語を書かせたら、同じく芥川賞作家の津村記久子さんか柴崎友香さんかって感じですね!
2015/05/24
橘
面白かったです。ちゃんとした大人になってるのかな、ってわたしも頻繁に感じますが、大人になり続ける、という生き方でいいのかもなと思いました。3人の付かず離れずの関係がちょうどよかったです。
2015/10/15
三平
小さな雑貨屋を営む既婚で3人の子持ちの夏美、年下の役者志望の青年と暮らす大学事務員のかおり、実家暮らしのイラストレーター珠子。10代に出会い、その後それぞれの人生を歩む彼女らの30代に入っての1年を描く小説。小説の醍醐味の一つが自分以外の人の心をのぞき、わかるわかる!と共感したり、こういう捉え方もあるんだとしんみりさせられたりすることだと思う部分だと思うのだが、本作は三人称でありながら登場人物たちの心情をうまく織り込み、充分味あわせてくれる。落ち込むこともあるけれど、それでも一歩一歩歩く女性の物語。
2015/07/18
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