猫ノ眼時計 (ちくま文庫)
猫ノ眼時計 (ちくま文庫) / 感想・レビュー
nuit@積読消化中
再読。伯爵と猿渡の幽明志怪シリーズ第三弾にして最終巻。あー、何度読んでも心穏やかになる(笑)。怪奇小説と言いつつユーモアのある語り口かつ、安定した著者の文章力により、本篇にも出てくる笑茸を自分も食したかのような、ふわふわと楽しい気分になる。また、今回も作中に登場する豆腐竹輪が食べたくて鳥取物産展に走るという(笑)。最終巻とは言わず、いつかまた伯爵と猿渡、そしてアイダベルに逢える日を願って!
2017/04/24
さっとる◎
私はどこにいるのだっけ。あの人は生きているのだっけ、もうとっくに死んでいるのだっけ。それとも、これから出会うのだっけ。あれ、さっきまでそこにいた猿渡はどこに行ったんだろう。おかしいなと思うけど、私はずっと一人だった気もする。でもちゃんとビールが私のやつの他にもう1本空いていて、少し首をかしげる。駐車場に彼の車がとまっているだろうか。でも、彼は今何に乗っているのだったっけ?デボネア?あれは妄想だったんだっけ?そもそも外は川底か地上か。猫を階上の人が飼っていたのはいつだった?豆腐が食べたい。そろそろ戻らねば。
2017/11/05
かわうそ
新キャラ登場で軽妙な会話が冴えわたりユーモア成分が増量する中、相変わらず酷い目に遭い続け現実と妄想の境界線上をふらふら彷徨いながらも必ず生還する猿渡の不死身っぷりがそろそろかっこよく思えてきたところで幕。冒頭の違和感が見事に回収される「玉響」がベスト。
2015/12/16
yumiDON
巻末まで読み、気がついたこと…。これ、シリーズ最終巻なんだ…。ポジティブに言い換えれば気がつかずに読み切ることは出来ます。猿渡を中心とした、アイダベル、伯爵、伊予田など、個性的としか言いようのない面々と、奇妙な出来事。それはどこか悪夢に迷い込むような酩酊感を伴う、しかし読めば読むほど味が出て離れがたい魅力がある。どの短編も正気と狂気の狭間でバランスを取ろうとし、しかし転がり落ちてしまう人物が深刻ではなくコミカルに、時にはシュールに描かれる。何とも味わい深い作品です。
2022/05/05
ナチュラ
津原泰水さんは大好きな作家の一人で、その作品の中でも特に好きなものがこの【猿渡シリーズ3部作】だ。本書はシリーズ3作目であるが、全作品短編集で時系列がバラバラなので、こちらから先に読んでも問題ない。表題の作品は猿渡が学生時代に体験した不思議な話。また、やや長い(中編的)な「城と山羊」は、人探しの為に瀬戸内の山羊の島を訪れ、怪しい集団の中に潜入したりスリリングな展開だった。 最終巻でもあるので猿渡の歴史年表も付録としてあるところが嬉しいかぎりだ。このシリーズは私にとって最高の怪奇小説だ。
2020/03/31
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