幸福はただ私の部屋の中だけに (ちくま文庫)
幸福はただ私の部屋の中だけに (ちくま文庫) / 感想・レビュー
青蓮
森茉莉のエッセイは幾つか読んできたけれど、本作が一番良かったです。自分が心地良いと思う物に囲まれ、美しい物だけを見てきた彼女の生き方はなかなか出来る事ではないだろう。森茉莉と言う人はふわふわと、夢のような中で生きてきた永遠のお嬢様だ。「やわらかな気持ちでよい文章と暮らす」では作家としての彼女の矜持を見た気がして心動かされました。ラストを飾る「真直ぐの道」で語られる「不幸」についての記述は読者を勇気づける名文だ。悲しい事も辛い事もある人生に於いて「全ては楽しんだ者勝ち」という彼女のモットーが朗らかに心地よい
2017/09/07
ヒロミ
子どもの頃友人宅に遊びに行った際、六角形の綺麗なアルミ箱にぎっしり詰まった宝石のように美しいチョコレートを振る舞われたが、そのとき美に触れた原風景を思い起こさせてくれるかのような、森茉莉の豪奢な美文で綴られた随筆集。本のタイトルが秘めやかな美しさを感じて好き。森茉莉は三島とも親交が深かったが、三島とはまた違った和洋折衷の美の探究者である。ボワイエやグレコのシャンソンを流しながら気怠い午後に読み返したい一冊です。
2018/01/26
こばまり
通勤電車の中で読んではしっくりこないはずだ。今日の私のように窓辺で風に吹かれて浸るが相応しい。
2017/09/11
ユメ
森茉莉の文章は、どんなに短くとも必ずきらりと輝く宝石を秘めていて、いちど知ったらやみつきになってその紅い煌めきを追い求めてしまう。茉莉の宝石はお金で買えるものではない、心で生み出すものだ。茉莉のエッセイから私が得たいちばんの教えは、幸福とは自分の心の持ちようなのだということである。思えば茉莉の人生は激動だ。生活水準という点で見ても大きな変動があっただろう。しかし茉莉は、後半生こそ自分の部屋の中を幸福で満たしてご機嫌に暮らしている。その「贅沢貧乏」の精神に触れるたび、この人は薔薇色の夢を見る天才だ、と思う。
2018/01/23
橘
森茉莉さんの住む部屋についてを中心にまとめられたエッセイ、こちらもとても面白かったです。ガラスの瓶を始め、森茉莉さんの美意識で選ばれたものに囲まれた暮らし、他の人から見たらごちゃごちゃ…かもしれませんが、素敵な暮らしだと感じました。心根が贅沢なんだろうなと思います。これからは、たとえ不幸だなと感じられる事があっても、ほんとうの幸福を受け取れるような気がします。好きを求める、そんな生き方をしていいのだと思えました。
2017/07/12
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