父と私 恋愛のようなもの (ちくま文庫)
父と私 恋愛のようなもの (ちくま文庫) / 感想・レビュー
青蓮
森茉莉による、父・森鴎外についてのエッセイ。本書を読むといかに森茉莉が父を慕って、愛していたが解るし、鴎外が娘に向ける慈愛に満ちた眼差しをありありと感じられる。森茉莉が抱くそれはファザコンと言ってしまえばそれまでだけれど、でもその一言では片付けられない想いの深さを覚える。とても甘やかな愛情、感情。やがて成長し、結婚をして生家を出て、夫が待つパリへ渡航する森茉莉。父と離れなければいけない、そして鴎外も娘を手放さなければいけない、その切なさが胸を打つ。何処までも父に愛されていた森茉莉は幸せだったと思う。
2018/05/14
Ryuko
森茉莉から見た父鴎外。タイトルの通り、相思相愛のふたり。16歳くらいまで父の膝にのっていたそうだ。何をしても「お茉莉は上等」と娘を礼賛していたという鴎外とパッパを最初の恋人という茉莉。少女のころのままの感性と率直さでつづられたエッセイ。時に率直過ぎて、心配になるほど。独特の読点の打ち方、言葉の選び方が心地よい。
2018/08/02
阿部義彦
ちくま文庫新刊です。森茉莉さんのアンソロジーシリーズ5冊目父も母も再婚同士で森茉莉さんは初めての子供で生まれた時は48歳でした。パッパの膝の上が精神の母体だったのかも知れません。娘が夫と海外に暮らすためにひとはだ脱いだときには既にかなり体調が弱っていて(腎臓不全)自分はもう永くはないが例え死んだとしてもこの事は茉莉には知らせてはならない!と強く願った親心この事は何度もこの巻には出てきます。もう二度と会えない事を知りつつ娘を送った心情や如何に?そしてその姿が鳩の様だった。←意味を知りたかったらぜひ読んで!
2018/06/09
ほし
森鴎外の長女、森茉莉は「初恋は父」といって憚らないほど父親のことを愛していたという。ぼくも娘をもつ父親として、一体どうやったらそんなに娘から想われるのでしょうか鴎外先生、というような心持ちで読んでみましたが、シンプルに森鴎外が娘を溺愛していたのだ、ということが分かりました。娘を膝に乗せ褒め言葉をかけ続けた鴎外は、娘を叱ることもせず、どうしても叱らねばと思った際は妻に頼んで叱ってもらっていたとか(流石にそれはどうかと思いますが…)。文章の端々から、鷗外が娘に対して真摯に接していた様子が伝わってきました。
2019/04/06
あ げ こ
甘く、美しく、綺麗で、悲しくて、満ち足りていて、穏やかで、豊かで、幸福で、素晴らしく貴重であるもの。後にも先にもない、唯一無二の、ただそれだけが、ほんものであると言うべきもの。色褪せる事なく、言葉を以って取り出す事で、かえってその濃さを、純度を増して行くもの。言葉にすればするほど、その色合いも、香りも、快さも、ますます深まって行くもの。痛みさえ、悲しみさえ綺麗な。唯一無二の、稀少な輝き。その冷静さが際立つ。よく見ているが故に。よく理解しているが故に。よく意識し続けているが故に生じる。その眼差しの冷静さが。
2018/10/25
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