アジア沈殿旅日記 (ちくま文庫)
アジア沈殿旅日記 (ちくま文庫) / 感想・レビュー
ホークス
著者はついに気づいた。何かを成し遂げたり、他人を凌駕しようとする旅はいらない。もっと本格的でない旅、非日常を味わうだけの旅が必要だと。全くその通り。仕事的ガンバリに背を向けた、ユルい旅の本を著者には書いて欲しい。本書はちょっと変わっている。ぽわんとした紀行文に、著者が旅について考えたあれこれと、日常が溶解するような幻想譚が割り込んでくる。こんな実験作が書きたかったらしい。全体としては中々楽しい。面白いのは著者が、自分はユーモア旅行記を書いてきた、と述べている事。ユーモアって、レトロでかわいい表現だ。
2019/10/24
saga
読み始めて抱く違和感。それは文庫版あとがきで明らかにされる。恐らく精神的なものと思われる不明な痛み「ペリー」と闘うために休暇旅行という仕事に出かける著者。台湾などのアジア、そして熊本の紀行文のクライマックスに表現される異世界は、『スットコランド日記』で著者がユーモア旅行記の裏に潜む著者の苦悩を知っているだけに、思わず精神の心配をしてしまった自分。私も著者と同じで、旅先でのポートレートよりも風景写真を撮りたい派。このあたりもシンパシーを感じるのだ。
2018/11/28
おいしゃん
いつもの数倍ぶっ飛んだ文章で、本当に宮田さん??もしかして町田康と共著?と思ってしまうようなスタイル。あとがきによると実験作とのこと、やっぱり。
2024/10/13
カツ
期せずしての再読。前回も思ったが哲学的・文学的な文章が多く、というかクスリやりすぎじゃね的な感じが凄く好きです。あとがきを読むとやはり意識してそうしてたのか。しかし、文庫化にあたりタイトル変更は反則だよな。新作かと思って借りてしまった。
2019/03/27
cithara
本書で初めて著者の写真を見た。神経質そうで苦み走った顔の男性。公表するからにはシブく見える写真を選んだのだろうか。でもこれまで抱いてきた著者のイメージ(ジェットコースターや巨大大仏に「ヒャッホ~!」する図)が瓦解した。今回著者の文章はすっかり内省的になっている。まさに「自分のなかに沈降して」いる状態。それは著者が患っている謎の症状<ペリー>と関係があるのか? 彼にとって旅がその症状から目をそらす手段であるなら、私にとっては読書がそれにあたるかも。彼自身も本書を異色作と言っている。以前の文章も好きなのだが。
2018/11/17
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